海水から金を取り出せる?海に眠る50億トンの金を採掘する方法や課題とは

※下記の画像は全てイメージです
地球の表面の約70%を占める海。その広大な海水の中に、実は膨大な量の金が溶け込んでいることをご存知でしょうか。世界中の海に眠る金の総量は約50億トンとも推定され、人類がこれまでに採掘した金の総量(約20万トン)をはるかに上回ります。
しかし、なぜ私たちは海から金を採取していないのでしょうか。技術的な課題、経済的な問題、そして環境への配慮など、さまざまな要因が絡み合っています。
本記事では、海水に含まれる金の実態から、過去の採取への挑戦、現在直面している課題、そして最新技術による可能性まで、海水と金にまつわる興味深い事実を詳しく解説します。

Contents
海水に金が含まれているという驚きの事実の詳細

海水に金が含まれているという事実は、19世紀にはすでに科学的に確認されていました。現代の分析技術により、その存在量や分布がより詳細に明らかになっています。
海水1トンに含まれる金の量
海水1トン(1,000リットル)に含まれる金の量は、平均して約0.01~0.06ミリグラムです。この数値は、東京大学大気海洋研究所やアメリカ地質調査所(USGS)などの研究機関が、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)という高精度な分析機器を用いて測定した結果です。
この濃度を身近な例で表すと、25メートルプール1杯分(約500,000リットル)の海水から採取できる金は、わずか5~30ミリグラム程度にしかなりません。1グラムの金を得るためには、最低でも16,000トン以上の海水を処理する必要があるということになります。
金は、主に金イオン(Au³⁺)や塩化金錯体(AuCl₄⁻)として海水中に溶存しており、目に見える金属片として存在しているわけではありません。
世界の海に眠る50億トンの金とは
地球上のすべての海水に含まれる金の総量は、推定で約50億トンに達するといわれています。この数値は、地球の海水総量である約13億5,000万立方キロメートル(1.35×10²¹リットル)に、平均濃度を掛け合わせて算出されたものです。
人類がこれまでに採掘した金の総量は約20万トン(2023年時点)であると考えると、海水中には実に25,000倍もの金が存在することになります。仮にこのすべてを採取できれば、現在の金の年間採掘量(約3,000トン)の約167万年分に相当します。
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ただし、この膨大な量の金は地球全体の海水に極めて薄く分散しているため、実際に回収することは、現在の技術では不可能に近いといえるでしょう。

なぜ海水に金が溶け込んでいるのか
海水に金が溶け込んでいる背景は、主に地球の地質学的プロセスによるものです。火山活動や海底の熱水噴出孔から放出される熱水には、地殻深部から溶け出した金が含まれています。
特に、プレート境界付近の海底熱水鉱床では、摂氏350度を超える高温の熱水が噴出しており、この熱水には通常の海水の約17,000倍の濃度で金が含まれていることもあります。また、陸上の岩石が風化・侵食される過程で、微量の金が河川を通じて海に運ばれることも一因です。
長い地球の歴史の中で、こうしたプロセスが繰り返されることで、現在の海水中の金濃度が形成されたと考えられています。
海水から金を取り出す試みの歴史

海水から金を採取しようという試みは、100年以上前から世界各地で行われてきました。しかし、その多くは技術的・経済的な壁に阻まれ、実用化には至っていません。
ノーベル賞科学者ハーバーの壮大な実験と失敗
1920年代、アンモニア合成法でノーベル化学賞を受賞したドイツの科学者フリッツ・ハーバーは、第一次世界大戦後のドイツの賠償金支払いのため、海水から金を採取する国家プロジェクトを主導しました。
ハーバーの研究チームは、調査船メテオール号に巨大な海水ろ過装置と実験室を設置し、1920年から1926年にかけて北海と大西洋の各地で海水サンプルを採取・分析しました。
しかし実験の結果、海水に含まれる金の量は、当時推定されていた値よりはるかに少なく、採算が取れないことが明らかとなりました。
この結果を受けて、ハーバーは「海水から金を採取することは、技術的には可能だが経済的には不可能である」と結論づけ、プロジェクトは中止されました。
日本における海水金採取研究の変遷
日本では、四方を海に囲まれた地理的条件を活かし、1980年代から海水資源の活用研究が本格化しました。レアメタルを選択的に吸着する特殊な樹脂の開発が進められましたが、海藻や貝殻、コケなどの付着が多く、失敗に終わりました。
2010年には、波力を利用した海水給水システムと、金・レアメタルを油に付着させて回収する装置が考案されています。2012年には佐賀大学が、リチウムを効率的に回収する実験を行い、海水資源活用の可能性を示しました。
最近では、2021年から2023年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)と株式会社IHIの研究チームが、東京・青ヶ島沖の深海熱水噴出孔付近で、藻類を加工した特殊シートを用いた金の回収実験を実施しています。
なぜ海水から金を抽出できないのか

海水に膨大な量の金が存在することは確かですが、効率的に抽出するには大きな障壁が存在します。経済性、技術、環境への影響という3つの観点から、その理由を詳しく見ていきましょう。
経済的に採算が取れない
海水から金を採取する最大の障壁は、圧倒的にコストが高いことです。現在の金の価値で計算すると、1グラムの金を得るために必要な海水処理コストは、その数倍から数十倍に達します。
さらに、処理施設の建設には数百億円規模の初期投資が必要となり、投資回収の見込みが立たないのが現状です。
技術的な課題と現在の限界
海水中の金を選択的に抽出するのは、技術的に極めて困難です。海水には、ナトリウムイオン(約10,800mg/L)、塩化物イオン(約19,400mg/L)、マグネシウムイオン(約1,290mg/L)など、金の100万倍以上の濃度で他のイオンが存在しています。
これらの共存イオンの中から、わずか平均濃度0.01〜0.06mg/Lという極微量の金イオンだけを選択的に分離・回収することは、現在の分離技術では実質的に不可能です。仮に、金を吸着できる材料を開発しても、大量の海水を処理する過程で吸着剤が劣化し、頻繁な交換が必要になります。
また、海水中の有機物や微生物によるバイオフィルムの形成も大きな問題となり、装置の効率を著しく低下させてしまいます。
環境への影響と持続可能性の問題
大規模な海水処理は、海洋生態系に深刻な影響を与える可能性があります。
仮に、年間1グラムの金を海水から採取しようとすると、最低でも16,000トンもの海水を処理することが必要です。この規模の海水を汲み上げ、処理することで、プランクトンや小型海洋生物が大量に失われ、海域の生態系バランスが崩れる恐れがあります。
また、処理後の廃水に含まれる化学物質が、海洋汚染を引き起こす可能性もあります。
エネルギー消費の観点からも、大量の電力を必要とする海水処理は、二酸化炭素排出量の増加につながり、地球温暖化を加速させかねません。
「海底熱水鉱床」から金を採掘する試みとは

海水そのものからの金採取が困難な中、海底に存在する鉱床からの採掘が現実的な選択肢として注目されています。日本近海には世界有数の海底資源が眠っており、その開発が期待されています。
海底熱水鉱床とは何か
海底熱水鉱床は、海底の火山活動により形成される鉱物資源の集積地です。地下深部から噴出する300~400度の熱水が、冷たい海水と接触することで、溶けていた金属が急速に沈殿し、鉱床を形成します。
海底熱水鉱床は、水深500~3,000mの中央海嶺など海底が拡大する場所(海底拡大軸)やニュージーランド、パプアニューギニア、日本などの海溝系に分布し、世界で約350か所程度発見されています。
これらの鉱床には、金だけでなく銀、銅、亜鉛、鉛などの有用金属が高濃度で含まれているため、今後の開発により、採掘が期待されているのです。
日本での海底鉱物採掘の成功事例
2017年9月、日本は世界で初めて海底熱水鉱床からの連続的な鉱石採掘・揚鉱に成功しました。
経済産業省から委託を受けた石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が主導したこのプロジェクトでは、沖縄県久米島沖の水深約1,600メートルの海底から鉱石を採掘しました。また、海底熱水鉱床の鉱石から、「亜鉛地金」の製造に成功するなど、選鉱・製錬技術の開発も進んでいます。
この成功により、海底資源開発の技術的な実現可能性が証明され、2028年頃の商業化を目指した開発が進められています。
日本近海に眠る資源の可能性
日本の排他的経済水域(EEZ)内には、世界有数の海底鉱物資源が存在することが明らかになっています。伊豆・小笠原海域白嶺鉱床では、金を含む10万トンの鉱物の資源量が確認されました。
また、金・銀の含有率が高い「ごんどうサイト」(沖縄本島北西沖)で、遠隔操作無人探査機(ROV)を用いた海底観察と試料採取を実施し、この海域に有望な海底熱水鉱床が存在することが確認されています。
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これらの資源がすべて採掘可能になれば、日本は金の産出国として世界有数の地位を占める可能性があり、資源小国から資源大国への転換も夢ではありません。

金に関するよくある質問

金についてよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 世界のどの海域に、最も多くの金が含まれていますか?
A.金の濃度が比較的高い海域は、太平洋の深海部、特にプレート境界付近や海底火山の活動が活発な地域です。太平洋深海部では平均0.06mg/Lと、大西洋(0.03mg/L)、インド洋(0.01mg/L)と比較して約2~6倍の濃度が確認されています。
日本近海では、伊豆・小笠原海溝付近や南西諸島周辺で、通常より高い濃度が観測されています。また、黒海やバルト海といった海域でも、河川からの流入と蒸発のバランスにより、局所的に高濃度となる場合があります。
Q. 個人でも、海水から金を採取することは可能ですか?
A.理論的には可能ですが、現実的には不可能に近いといえます。仮に個人で挑戦する場合、最低でも16,000トンの海水を処理して、ようやく1グラムの金が得られる計算です。
必要な設備として、大型ポンプ、濾過装置、イオン交換樹脂、電気分解装置などが必要となり、初期投資だけで数千万円かかります。
また、処理に必要な電力費だけでも、得られる金の価値を大きく上回ってしまいます。趣味や実験として少量の海水で試すことはできますが、経済的な利益を得ることは期待できません。
Q. 海水中の金の量はどのくらいですか?
A.地球上のすべての海水に含まれる金の総量は、約50億トンと推定されています。これは海水の総量約13億5,000万立方キロメートルに、平均濃度0.01〜0.06mg/Lを掛けて算出された数値です。
比較のため具体的な数字を挙げると、人類がこれまでに採掘した金の総量は約20万トンで、現在地上に存在する金の総量は約5万トン、年間の金採掘量は約3,000トンです。
Q. 日本は金の埋蔵量世界一?
A.日本の金埋蔵量は世界的に見て少ないものの、海底資源を含めると状況が大きく変わります。日本の排他的経済水域(EEZ)内の海底熱水鉱床には、大量の金が埋蔵されているためです。
これらの海底資源をすべて採掘可能になれば、日本は金の産出国として世界有数の地位を占める可能性があります。
Q. 日本の海で金は採れますか?
A.現時点では、通常の海水から経済的に金を採取することはできませんが、海底熱水鉱床からの採掘は技術的に可能となっています。
実際に世界初の海底熱水鉱床からの連続採掘に成功し、金を含む鉱石の回収に成功しています。
Q. 日本で1番金が取れる場所は?
A.現在、日本で唯一商業的に金を生産している鉱山は、鹿児島県の菱刈鉱山です。年間約6トンの金を産出し、鉱石1トンあたりの金含有量は平均20グラムと、世界最高水準の品位を誇ります。1985年の操業開始以来、累計で約260トンの金を産出しています。
海底資源では、沖縄県久米島北西の「ごんどうサイト」が有望視されており、金品位は最大1.7g/トンを記録しています。将来的には、この海底鉱床が日本最大の金産出地となる可能性があります。
Q. 金は何に使われているのか?
A.金の用途は多岐にわたり、宝飾品や投資用(金貨・金地金)、工業・医療の分野で活用されています。金の代表的な用途は装飾品で、指輪やネックレス、ブレスレット、イヤリングなどさまざまなジュエリーに加工されています。
また、金は「有事の金」と呼ばれ、金貨や金地金(インゴット)は、世界共通の価値を持つ実物資産として投資家や企業が購入しているのです。
Q. なぜ金は安全資産と呼ばれるのですか?
A.金が安全資産と呼ばれる最大の理由は、価値がゼロにならないことです。
企業が倒産すれば株式は紙切れに、国が破綻すれば国債も無価値になる可能性がありますが、金はそれ自体が価値を持つ実物資産です。歴史を振り返れば、1929年の世界恐慌や1970年代のオイルショック、リーマンショックとコロナショックなど、大きな危機のたびに金価格は上昇してきました。
金の供給量には物理的な限界があり、中央銀行が紙幣を無制限に刷ることはできても、金を無から生み出すことはできません。この希少性が価値の安定性を支えています。
Q.日本の金鉱山はなぜ閉山したのか?
A.日本の金鉱山が閉山した主な理由は、鉱石の枯渇、戦時中の金鉱山整備令、採算性の悪化の3つです。
最大の理由は鉱石の枯渇で、長年の採掘により採算の取れる金鉱石が掘り尽くされました。金鉱脈は数億年かけて形成されるため、一度掘り尽くせば再生しません。
次に、1943年に施行された金鉱山整備令により、戦争遂行に必要な銅や鉄の採掘が優先され、多くの金鉱山が強制的に操業停止となったことも要因の1つです。
長期間の休止で坑道が崩落や浸水の被害を被り、採算が取れなくなったことで戦後に再開できなかった鉱山も少なくありません。
まとめ
海水に含まれる50億トンもの金は、確かに存在します。しかし、その濃度があまりにも希薄であるため、現在の技術と経済条件では採取が不可能な状況にあります。
過去100年以上にわたる挑戦の歴史を経て、私たちは海水からの直接的な金採取の困難さを学びました。一方で、バイオテクノロジーやナノテクノロジーといった最新技術の発展により、将来的な可能性は完全に閉ざされたわけではありません。
現実的な選択肢として注目される海底熱水鉱床の開発は、日本が資源大国となる可能性を秘めています。
商業化を目指す取り組みが成功すれば、海は文字通り「宝の山」となるかもしれません。技術革新と環境保全のバランスを保ちながら、海洋資源の持続可能な活用方法を模索していくことが、今後の重要な課題といえるでしょう。
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「おたからや」での金の参考買取価格
「おたからや」での金の参考買取価格は下記の通りです。
2025年12月10日09:30更新
※上記の買取価格はあくまで参考価格であり、市場の動向、今日の金1gあたりの買取価格相場表
金のレート(1gあたり)
インゴット(金)23,238円
+218円
24金(K24・純金)23,052円
+216円
23金(K23)22,169円
+208円
22金(K22)21,193円
+199円
21.6金(K21.6)20,682円
+194円
20金(K20)18,916円
+178円
18金(K18)17,405円
+163円
14金(K14)13,478円
+126円
12金(K12)10,457円
+98円
10金(K10)9,342円
+88円
9金(K9)8,389円
+79円
8金(K8)6,228円
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5金(K5)3,021円
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