金はどのように採掘される?金鉱脈発見から精錬方法までを解説

NEW
金はどのように採掘される?金鉱脈発見から精錬方法までを解説

アクセサリーやジュエリーでは美しい輝きを見せる金ですが、その大元となる金鉱石について間近に見たことがある方は少ないのではないでしょうか。金は鉱石にごく微量しか含まれておらず、その分希少価値も高いのです。本記事では、金鉱脈の発見から金抽出までの流れを詳しく解説いたします。

金鉱脈はどのようにして発見される?

金を発掘するには、まず金鉱脈を発見する必要があります。先人たちは、どのようにして金の眠る鉱山を発見してきたのでしょうか。

金鉱脈を発見する方法には主に「砂金をもとに川をたどって発見するケース」または「温泉をもとに金鉱脈を発見するケース」の2つがあります。それぞれどのようにして金鉱脈に辿り着けるのか見てみましょう。

砂金をもとに川を辿って発見するケース

1つめは河川を遡って発見されるケースです。河川には砂金、すなわち微小な金の粒がみられることがあります。これは、上流にある金鉱脈の一部が雨風によって少しずつ削られることで起こる現象です。

このことから、河川に砂金と呼ばれる細かい金の粒があれば、その上流には金が眠っている可能性が高いと言えます。闇雲に山を探すよりも、いくつかの河川において下流で砂金があるかどうかを確認することで、効率よく金鉱脈へと辿り着けるでしょう。これまでもこの方法で、多くの金山が見つかってきました。

温泉をもとに金鉱脈を発見するケース

2つめは温泉地で金鉱脈が見つかるケースです。日本には数多くの温泉地がありますが、どこの温泉地でも良いわけではありません。重要なのはその温泉に「塩素が多く含まれているかどうか」です。

塩素を含む温泉の出る地域には、「浅熱水性金銀鉱床」がある可能性の高いことが分かっています。「浅熱水性金銀鉱床」は、火山帯で上昇したマグマの中から溶けだした金や銀が、温度の急激な変化によって固まってできる鉱脈です。

金鉱脈を温泉地で発見するには「浅熱水性金銀鉱床」がポイントとなることから、「塩素を含む温泉地」を見つけることが重要となります。しかし、塩素を含む温泉地を見つけたところで、どこに金鉱脈があるか、本当に金鉱脈があるかはまだ分かりません。あくまでも可能性が高いだけであり、金鉱脈を発見するにはその後に地下を掘り続ける作業が必要となります。

 

金鉱石から金を取り出す方法

金鉱脈を発見したら、いよいよ金鉱石の採掘です。しかし、採掘された鉱石に含まれる金はごくわずか。鉱石の中のわずかな金は、どのようにして取り出されるのでしょうか。

鉱石の中から貴金属を取り出す過程を「製錬」と言います。取り出された金属塊からさらに高純度の金属を取り出すのは「精錬」。同じ読み方ですが、別の概念です。

国や地域によっても製錬方法は異なりますが、ここでは4つの方法をご紹介します。

「青化法」

青化法は、青化カリや青化ソーダの溶液を使う方法です。金鉱石を砕いて水を加えて粉砕し、泥状にしたものに青化ソーダ溶液を加えると、溶液中に金と銀が溶け出します。濾過して溶液だけを回収したら、亜鉛粉末を加えることで金と銀が分離し、金を取り出せるようになるのです。金と銀が溶けだした溶液のことを、貴い液「貴液」と呼びます。

この方法は、1888年にイギリスで特許製法として発表されました。金が多く含まれる鉱石に有効とされる方法です。

「灰吹法」

灰吹法は粉々にした金鉱石を鉛に入れて溶かすことで、金のみを採掘する方法です。まず、細かく砕いた金鉱石を鉛と一緒に炭火で溶かし、金銀を含む鉛合金(貴鉛)を作ります。この合金を灰が敷き詰められた皿状の容器に乗せ、空気を送りながら約1000℃まで加熱すると、鉛が他の卑金属とともに酸化して灰に染み込み、金銀だけが残るという仕組みです。金と銀を取り出した後は、「金銀吹き分け法」や「焼金法」といった手法によって金と銀を分け、さらに純度を高めていきます。

旧約聖書にも記載があるほど古くから行われていた方法で、日本では江戸時代に用いられていました。

「アマルガム法」

アマルガム法は、水銀に溶けやすいという金の性質を利用した方法です。まず金鉱石を水銀と合わせて細かく砕き、「アマルガム」と呼ばれる合金にします。これを加熱することで水銀を蒸発させ、金や銀だけを取り出すのがアマルガム法です。

水銀さえあれば、比較的規模の小さい工場でも費用を抑えて金を取り出せます。しかし、使用する水銀は人体や地球環境に与えるリスクが大きいため、現在では南アフリカなどのごく一部の地域でしか行われていません。

「銅の溶鉱炉」

現在の主流は、銅の溶鉱炉を利用した製錬方法です。大規模な設備が必要ですが、「アマルガム法」のように人体や地球環境に影響を与えずに金を取り出せます。おおまかな手順は以下の通りです。

金鉱石を銅鉱石と一緒に溶鉱炉に入れることで、金・銀・銅が混ざり、銅のみが最初に取り出されます。銅が全て取り除かれた後に再度溶鉱炉を熱し、次に取り除かれるのが銀。最後に残った金属を電気分解処理して、金を取り出します。

大規模設備を要するため、導入が難しい地域もあるのが課題です。

 

希少で多くの手間もかかる金

これまで解説してきた通り、金鉱脈を発見し、鉱石を採掘して純度の高い金を取り出すまでには非常に多くの手間や時間がかかります。また、金鉱石に含まれる金の量もごくわずかであるとお伝えしました。金鉱石1トンから得られる金は、平均約5グラム程度とも言われています。

これまでに地球上ではおよそ20万トンの金が採掘されたと言われており、残る埋蔵量は約5万トン程度のようです。今のペースで採掘を続ければ、近い将来金が枯渇してしまうかもしれません。実際日本でも、多くの金山が資源の枯渇によって閉山しています。国内で唯一商業規模での稼働を続けているのが、鹿児島県の菱刈鉱山です。この鉱山では、1トンあたりおよそ20グラム以上の金を含む鉱石が採掘されています。

 

まとめ

金鉱脈の発見方法から、金を製錬・精錬する過程について解説してきました。有限かつ希少性の高い資源であり、採取や精錬にも多くの手間がかかる金。高い価格で取引されているのもうなづけますね。金製品を手にしたときには、製品となるまでの過程にも思いをはせてみてはいかがでしょうか。

上へ戻る