プラチナは金よりも希少性が高く、世界でも限られた国でしか産出されない貴重な貴金属です。年間産出量は金と比較しても非常に少なく、その希少性の高さや工業用途での需要から高い価値があります。

本記事では、プラチナの主要産出国をランキング形式で紹介し、各国の採掘量や埋蔵量、産出の特徴について詳しく解説します。

南アフリカが世界総産出量の約70％以上を占める圧倒的なシェアを誇る理由や、ロシア・ジンバブエなど他の産出国の状況、さらに日本国内での産出実態まで幅広くお伝えします。

プラチナの産出国ランキング

プラチナは世界のごく一部の国でのみ産出される貴金属です。データをもとに主要産出国をランキング形式で紹介します。

第1位 南アフリカ共和国(124,870kg)

南アフリカ共和国は、世界のプラチナ産出量で第1位です。2023年の産出量は124,870kgに達し、世界総産出量の約70％以上を占める状況です。

南アフリカには「ブッシュフェルト複合岩体」と呼ばれる巨大な岩盤地帯があり、この地域に豊富なプラチナ鉱床が存在します。他国では副産物として採掘されることが多い中、南アフリカのプラチナ産業は国の重要な経済基盤となっています。

南アフリカは、プラチナを主目的として採掘を行う世界で唯一の国といえるでしょう。

第2位 ロシア(約21,000kg)

ロシアは世界第2位のプラチナ産出国で、年間の総産出量は約21,000kgです。

ウラル山脈地域がロシアにおけるプラチナの重要な産出地となっており、ノリリスク・ニッケル社などが採掘を行っています。

ロシアの特徴は、ニッケルの副産物としてプラチナが採掘される点です。主目的はニッケルの採掘であり、プラチナは付随的に得られる貴金属として扱われます。

第3位 ジンバブエ(約19,180kg)

ジンバブエはプラチナ産出量で世界第3位です。年間のプラチナ総産出量は約19,180kgとされ、世界の総産出量の約8％を占めます。

ジンバブエにも大規模なプラチナ鉱床が存在し、国民にとって重要な経済資源として機能しています。アフリカ大陸においては南アフリカに次ぐプラチナ産出国であり、グレートダイク地域を中心に採掘が行われています。

近年は政治情勢の変化により産出量に影響が出ることもありますが、プラチナの世界市場への供給に大きく貢献している国の1つです。

第4位以降 カナダ・アメリカなど

第4位はカナダで、年間産出量は約5,174kgとされています。第5位は中国で、年間産出量は約4,000kgです。

北米地域では、プラチナは主にパラジウムの副産物として採掘されます。カナダではオンタリオ州のサドバリー地域が主な産地です。

中国では主に四川省や雲南省などでプラチナが産出され、銅やニッケルの副産物として採掘されることが特徴です。

プラチナ産出国の特徴と採掘方法

プラチナは単体で採掘されることが少なく、他の貴金属と共に産出されるケースが一般的です。各産出国の採掘方法と特徴を見ていきましょう。

南アフリカの大規模鉱床と採掘技術

南アフリカのプラチナ鉱山は、地下深くまで及ぶ大規模な採掘が特徴です。現在では地下1,000メートル以上の深さで掘削が行われています。

南アフリカで採掘が行われるブッシュフェルト複合岩体には、プラチナやパラジウム、ロジウム、イリジウムなどのプラチナ族元素(PGM)が豊富に含まれています。これらの貴金属が同じ場所に集まっているため、一度の採掘作業で複数の金属を取り出すことができます。

この経済効率の高さが、莫大な採掘コストをかけても採算が取れる理由となっており、結果として大規模な投資が可能になっています。こうした地質的・経済的な優位性が、南アフリカを世界最大のプラチナ産出国にしているのです。

ただし、現在の深部採掘には高度な技術と莫大なコストが必要となり、労働環境の安全確保も大きな課題です。近年は採掘コスト上昇への対応として、自動化技術の導入などが進められています。

ロシア・北米における副産物としての採掘

ロシアではニッケル鉱山において、ニッケルの副産物としてプラチナが採掘されます。ノリリスク地域の鉱山では、ニッケルと銅を主目的として採掘を行い、その過程でプラチナやパラジウムが得られます。

北米、特にカナダやアメリカでは、パラジウムの副産物としてプラチナが採掘されるケースが多いです。ただし、採掘の主目的であるパラジウムなどの金属の需要によってプラチナの生産量が左右されるため、プラチナ単独での増産調整が難しい側面もあります。

プラチナの精錬プロセス

プラチナの精錬は非常に複雑で時間のかかるプロセスです。原鉱石を採掘した後、破砕、選鉱、製錬、精製という複数の工程を経て純粋なプラチナが得られます。

1トンの原鉱石からわずか約3gのプラチナしか取り出せません。この数値からも、プラチナの希少性が際立ちます。

精錬には数か月の時間を要することもあり、高温での処理や化学的な分離作業など、高度な技術が必要です。こうした精錬コストの高さも、プラチナの価値を支える要因の1つです。

地球上でのプラチナの埋蔵量と今後の見通し

地球上に残されているプラチナの埋蔵量は限られており、将来的な供給には不安要素も存在します。プラチナの埋蔵状況と今後の見通しについて解説します。

プラチナの総埋蔵量

地球上に存在するプラチナの埋蔵量は約16,000トンとされています。一方、金の地球上の総量は約20数万トンであり、それぞれを比較するとプラチナの希少性が明確となります。

これまでに採掘されたプラチナの総採掘量は約5,000〜7,000トン程度で、金の総採掘量が約15〜17万トンです。

また、地殻内における新たな大規模鉱床の発見は稀であり、既存の鉱床からの採掘が中心となっています。実際、2006年の約211.5トンをピークに鉱山からの生産は減少傾向にあり、2022年は約155.5トンとされています。

このため、将来的にはプラチナ採掘の限界が訪れる可能性も指摘されているのです。

金と比較するプラチナの価値とは

産出量から見ると、プラチナは金の約15〜20分の1しか採れない希少な貴金属です。この希少性こそが、プラチナの高い価値を支える要因の1つとなっています。

ただし、市場価格は産出量だけでなく需要によっても左右されるため、プラチナが金より高価とは限りません。

金は投資や資産保全としての需要が大きく、宝飾品としても根強い人気があります。一方、プラチナは工業用途の比率が高く、特に自動車産業の動向が価格に大きく影響するのです。

プラチナが枯渇する可能性も

現在の採掘ペースが続いた場合、既知の埋蔵量は数十年程度で枯渇する可能性があります。特に南アフリカでは、採掘可能な浅い鉱床が減少しており、より深部での採掘を余儀なくされている状況です。

深部採掘はコストが高く、採算ラインを下回る鉱山も増えています。プラチナ価格が低迷すると採掘を停止する鉱山も出てくるため、供給量の減少が懸念されます。

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日本国内でのプラチナ産出状況

日本ではプラチナがほとんど産出されず、国内需要のほぼ全量を輸入に頼っています。国内での産出実態と、都市鉱山と呼ばれる日本の資源について説明します。

北海道の砂白金(さはっきん)

日本国内では、北海道内の一部の河川において、ごく少量の砂白金(さはっきん)が見つかっている程度です。砂白金とは、プラチナを含む砂金のような形態の鉱物を指します。

産出量は極めて微量であり、商業的な価値はほぼありません。学術的な調査や趣味としての砂金採りの対象となることはありますが、産業としての採掘は行われていない状況です。

日本の地質構造上、プラチナの大規模な鉱床が存在する可能性は低いとされており、今後も国内での本格的なプラチナ産出は見込まれないでしょう。

日本の「都市鉱山」とリサイクル

主要産出国に比べると天然の貴金属資源が少ない日本ですが、貴金属を使って作られた製品は国内に大量に存在します。携帯電話やパソコン、自動車の触媒などには、プラチナをはじめとする貴金属が含まれています。

近年、このリサイクル可能な貴金属は「都市鉱山」と呼ばれ、貴重な資源として注目を集めています。日本国内の都市鉱山に眠るプラチナの量は世界有数の規模です。

使用済み自動車の触媒からプラチナを回収する技術や、電子機器から効率的に貴金属を抽出する技術が発展しており、資源の有効活用が進められています。

プラチナの主な用途と産業への影響

プラチナは宝飾品だけでなく、工業用途でも幅広く使われている貴金属です。主な用途を紹介し、各産業におけるプラチナの重要性を解説します。

自動車産業

プラチナの最大の用途は自動車産業であり、全体の約半数が排ガス浄化装置である触媒コンバーターに使用されています。特にディーゼル車において重要な役割を果たしており、一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素を二酸化炭素や水蒸気に変換する優れた触媒能力によって、大気汚染の減少に貢献しているのです。

ただし、近年の電気自動車(EV)への移行により、触媒需要の減少が懸念されます。一方で、水素燃料電池車には従来以上のプラチナが使用されるため、水素社会の実現が進めば新たな需要が生まれる可能性があります。

自動車産業の方向性が、プラチナの需給バランスに大きな影響を与えている状況です。

宝飾品

プラチナは宝飾品としても需要があり、特に結婚指輪や婚約指輪の素材として、世界中で人気です。

プラチナの特徴は、長年使っても変色しにくい点と優れた耐久性です。時間が経っても変色しにくく、酸やアルカリにも強い性質から、ジュエリーなどの宝飾品でプラチナが選ばれています。

ダイヤモンドの煌めきを美麗に際立たせる貴金属としても認知されており、高級ブランドのジュエリーコレクションにも数多く使用されています。

その他の工業用途

プラチナは医療分野でも重要な役割を果たしています。生体適合性と耐食性に優れているため、心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器などの医療機器にも使用されています。

がん治療薬の製造にもプラチナが採用されており、化学療法において欠かせない存在です。また、燃料電池の電極材料としても使用され、水素と酸素を反応させて電力を生成する過程で触媒として機能します。

さらに、航空宇宙開発領域では、極度の温度変動や放射線に対する高い耐性を持つ素材として、宇宙機や人工衛星の電子装置に組み込まれています。このように、プラチナは現代文明における多様な最先端技術を下支えする希少資源です。

投資商品としても活用

プラチナは、金と並ぶ重要な投資商品として世界中の投資家から注目されています。プラチナ地金やプラチナコイン、ETF（上場投資信託）など様々な形で投資することが可能です。

特にプラチナ地金は500gや1kgのバーとして取引され、現物資産として保有する投資家も多く存在します。

価格変動の性質として、プラチナは産業用途からの需要の影響を顕著に受けるのが特徴です。自動車産業の趨勢や環境規制の厳格化によって価格が大幅に変動する場合があり、金と比較してボラティリティ（価格変動幅）が大きい傾向にあります。

投資商品としての魅力はその希少性と将来性にあり、限られた産出国に依存する供給構造と環境技術での需要拡大が期待されることから、長期的な価値上昇を期待する投資家が多いのです。

プラチナ産出国が抱える問題

プラチナ産出国にとって、プラチナ産業は重要な経済基盤となっています。各国の経済状況と国際情勢との関わりを解説します。

南アフリカでのストライキ

南アフリカにとって、プラチナ産業は雇用創出と外貨獲得の重要な手段です。鉱山では数十万人規模の雇用が生み出されており、関連産業も含めると経済への影響は極めて大きいといえます。

ただし、鉱山労働者の労働環境や賃金をめぐる問題は長年の課題となっており、ストライキが発生すると生産に大きな影響が出ます。

たとえば、2012年には、マリカナ鉱山における労使対立から、鉱山労働者と警官隊が衝突する事態に発展し、多数の死者が発生。2014年には、「プラチナベルト」と呼ばれる鉱山で、約5か月に及ぶ大規模ストライキが発生し、世界のプラチナ市場にも影響を与えました。

ロシアの経済的不安

ロシアにとってプラチナは、エネルギー資源に次ぐ重要な輸出品です。

ロシアは、2022年のウクライナ侵攻開始以降、様々な経済制裁を受けています。一部の国への輸出は増えているというデータもありますが、ロシアからの輸入を制限している国が多く、多数の国でプラチナの供給不足が懸念されています。

今後も、国際情勢の緊張により、ロシア産プラチナに対する制裁や取引制限の可能性がないとはいえません。ロシアからの供給が滞れば、世界のプラチナ市場に深刻な影響を与える可能性があります。

このため、プラチナの供給リスクを分散する動きや、リサイクル技術の向上が世界的に求められています。

国際市場への影響

産出国が限られているプラチナは、特定の国の政情不安や労働問題が直ちに国際市場に影響を与えます。南アフリカでストライキが発生したり、ロシアへの制裁が強化されたりすると、プラチナ価格は急騰する傾向があります。

供給不安が高まると、投資家がプラチナを買い求める動きも活発化します。ただし、需要側の自動車産業が不況に陥ると、供給不安があっても価格は上昇しにくくなるでしょう。

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プラチナ価格の推移と今後の相場予想

プラチナ価格は産出国の状況や世界経済の影響を受けて変動します。過去の価格推移を振り返りながら、今後の見通しを説明します。

過去20年間のプラチナ価格推移

プラチナは1990年代後半に一時的な低迷期を経験しましたが、2000年代に入ると自動車産業の需要増加により価格が回復しました。

しかし、リーマンショック後は世界経済の減速により価格が急落しました。その後も中国経済の成長鈍化や、ディーゼル車への逆風などにより、プラチナ価格は長期的な下落基調が続いたのです。

2020年以降はコロナ禍による供給制約や、経済回復への期待から価格が持ち直す場面も見られました。ただし、金と比較すると価格の回復は緩やかであり、工業用途の比率が高いプラチナ特有の動きといえるでしょう。

プラチナ価格を左右する要因

プラチナ価格に最も大きな影響を与えるのは、自動車産業の動向です。ディーゼル車の販売台数や排ガス規制の強化が触媒需要に直結し、価格を左右します。

産出国の供給状況も重要な要素です。南アフリカでのストライキや鉱山事故、ロシアへの経済制裁などは、供給不安を引き起こし価格を押し上げる可能性があります。

また、為替相場も無視できません。プラチナは国際市場でドル建てで取引されるため、円安が進めば日本国内でのプラチナ価格は上昇する傾向があります。投資マネーの流入や、景気動向も価格変動に影響を与える要素といえます。

今後のプラチナ相場見通し

2025年現在、プラチナ価格は、年初から上昇を続けています。

過去1年間の価格推移を見ると、2024年秋の底値から回復基調にあり、特に2025年に入ってからは、中国やインドなどの新興国での自動車需要増加が価格を押し上げています。

今後のプラチナ相場を見通す上で、水素社会の実現が大きな鍵を握っています。水素燃料電池車が普及すれば、触媒としてのプラチナ需要は大幅に増加する可能性があります。

供給面では、南アフリカの深部鉱山での採掘コスト上昇により、構造的な供給不足が続く見込みです。

リサイクル技術の発展により、都市鉱山からの供給が増える可能性もありますが、新規採掘量の減少を完全には補えません。これらの要因を総合的に考慮すると、長期的にはプラチナの希少性が価値を支え、安定した価格水準を維持すると予想されます。

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まとめ

プラチナは南アフリカを中心とした限られた国でのみ産出される貴重な貴金属です。世界の産出量の70％以上を南アフリカが占め、ロシア、ジンバブエがそれに続きます。

自動車の触媒や宝飾品など幅広い用途で需要があり、その価値は今後も維持される見込みです。ただし、地球上の埋蔵量には限りがあり、将来的な供給不安も指摘されています。

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