腕時計のプラスチック風防とは?傷の対処法から交換方法まで徹底解説
※下記の画像は全てイメージです
腕時計の風防には、サファイアクリスタル(別名:サファイアクリスタルガラス)やミネラルガラス、プラスチックが使用されています。中でもプラスチック風防は、1950年代から1970年代のヴィンテージウォッチに多く採用されており、現在でも一部のモデルで使用され続けている素材です。
プラスチック風防は傷がつきやすい特性がある一方で、割れにくく軽量という利点も持ち合わせています。また、傷がついても研磨により修復可能といった他の素材にはない特徴もあります。
最近では、プラスチック風防モデルのヴィンテージ感を楽しむ愛好家も多く、その独特の風合いが再評価されていると言えるでしょう。
この記事では、プラスチック風防の基礎知識やメリット・デメリット、傷の消し方、交換方法、日常のメンテナンスまで詳しく解説します。
Contents
腕時計の風防とは?
腕時計の風防は、腕時計の文字盤と針を保護する透明なカバーで、時計の顔とも言える重要な部品です。外部からの衝撃や水、ほこりから内部機構を守りながら、時刻を確認できる透明性を保つ必要があります。
風防の素材は主に3種類です。
サファイアクリスタルは最も高級な素材で、モース硬度9と極めて高い硬度を誇ります。傷がつきにくく、透明度も長期間維持されるため、高級時計に採用されています。ただし、衝撃で割れる可能性があり、価格も高額です。
ミネラルガラスは中級モデルに多く採用される素材です。通常のガラスを強化処理したもので、適度な硬度と手頃な価格を両立しています。日常使用には十分な耐久性があり、コストパフォーマンスに優れた素材です。
プラスチック風防(アクリル樹脂・プレキシガラス)は、柔軟性と加工性に優れた素材です。ドーム型など複雑な形状への加工が容易で、衝撃に強く割れにくい特性があります。現在は主にヴィンテージウォッチや、オメガ・スピードマスタープロフェッショナルのような特定モデルで採用されています。傷はつきやすいものの、研磨により修復可能な点も特徴です。
ガラス風防とプラスチック風防の違い
風防の素材選びは、時計の性能と使い勝手を左右します。それぞれの特性を比較し、違いを理解することが大切です。
素材と製造方法の違い
ガラス風防は、主にミネラルガラスやサファイアクリスタルから作られます。
ミネラルガラスは通常のガラスを強化処理したもので、サファイアクリスタルは酸化アルミニウム(アルミナ)を高温高圧で結晶化させて作られます。
一方、プラスチック風防はアクリル樹脂を射出成型または切削加工で製造されます。比較的低温で加工でき、複雑な形状も容易に作れるのが特徴です。ドーム型やレンズ効果を持たせた特殊な形状も、プラスチックなら実現可能でしょう。
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透明度という点では、新品状態ならどちらも優れていますが、光の屈折率が異なります。プラスチック風防は独特の温かみのある見え方をし、ガラス風防はよりクリアでシャープな印象を与えるでしょう。
耐久性と強度の比較
硬度の面では、サファイアクリスタルが最も優れ、次いでミネラルガラス、プラスチックの順となります。サファイアクリスタルはモース硬度9と非常に硬く、日常使用ではほとんど傷がつきません。ミネラルガラスはモース硬度3から6程度で、通常使用には十分な耐久性があります。
プラスチック風防の硬度は2程度と低く、爪でも傷がついてしまうほどです。しかし、柔軟性があるため衝撃を吸収しやすく、割れにくいという利点があります。耐熱性や耐薬品性では、ガラス風防が優れています。プラスチック風防は高温で変形したり、有機溶剤で溶けたりする可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。
腕時計のプラスチック風防メリット
プラスチック風防には、他の素材にはない独自の利点があります。これらのメリットを理解することで、プラスチック風防の価値を認識できるでしょう。
軽量性と装着感の良さ
プラスチック風防の最大のメリットは、その軽さです。同じサイズのサファイアクリスタルと比較すると、重量は約3分の1程度。この軽量性は、長時間の装着でも疲れにくく、快適なつけ心地を実現します。
特に大型の腕時計やドーム型風防の場合、重量差はより顕著になります。ヴィンテージのダイバーズウォッチなどで採用されている厚いドーム型風防でも、プラスチック製なら重量増を最小限に抑えられるでしょう。
また、プラスチック風防は熱伝導率が低いため、外気温の影響を受けにくいという特徴もあります。冬場でも風防が冷たくなりにくく、夏場の直射日光下でも熱くなりにくいため、季節を問わず快適に使用できるでしょう。
割れにくく安全性が高い
プラスチック風防は柔軟性があるため、衝撃を受けても割れにくいというメリットがあります。ガラス風防が割れるような衝撃でも、プラスチック風防なら凹むか傷がつく程度ですむことが多いでしょう。
万が一破損した場合でも、ガラスのように鋭利な破片にならないため、怪我のリスクが低いです。これは、スポーツやアウトドア活動、あるいは子供と接する機会が多い方にとって、重要な安全性と言えます。
NASAがスピードマスターでプラスチック風防を採用し続ける理由も、この安全性にあります。宇宙空間という極限環境で、破片が飛び散らないことは、宇宙飛行士の安全に直結する重要な要素なのです。
加工しやすく修理が簡単
プラスチック風防は加工性に優れており、研磨による傷の修復が可能です。軽い傷であれば、研磨剤と柔らかい布で磨くことで、透明度を取り戻すことができます。これは、ガラス風防では不可能な、プラスチック風防ならではの特徴でしょう。
交換作業も比較的簡単で、特殊な工具や技術がなくても対応可能な場合が多いです。風防の取り外しと取り付けが容易なため、修理時間も短く、費用も抑えられます。
また、特殊な形状への加工も容易です。ドーム型やレンズ効果を持たせた形状、あるいはカスタムメイドの風防も、プラスチックなら比較的低コストで製作できるでしょう。この柔軟性は、ヴィンテージウォッチの修復やカスタマイズにおいてメリットとなります。
腕時計のプラスチック風防デメリット
プラスチック風防には避けられないデメリットもあります。これらの特性を理解し、適切に対処することが大切です。
傷がつきやすい特性
プラスチック風防最大のデメリットは、傷つきやすさです。日常的な使用で、気づかないうちに細かな傷が蓄積していきます。デスクワークでの擦れ、袖口との摩擦、鞄の中での接触など、さまざまな場面で傷がつく可能性があります。
硬度が低いため、砂ぼこりや金属との接触で傷がついてしまうかもしれません。海辺や工事現場など、砂や粉塵が多い環境では特に注意が必要でしょう。一度深い傷がつくと、研磨でも完全に除去できない場合があります。
ただし、この特性は「味」として楽しむこともできます。使用による傷は、その時計と過ごした時間の証でもあります。ヴィンテージウォッチ愛好家の中には、あえて傷を残すことで、時計の歴史を感じる方もいるでしょう。
経年劣化による黄ばみ
プラスチック風防は、紫外線や熱の影響で経年劣化し、黄ばみが発生することがあります。特に長期間紫外線にさらされると、透明度が低下し、変色してしまいます。この変色は、素材自体の化学変化によるもので、完全に元に戻すことは難しいです。
また、経年劣化により素材が硬化し、もろくなることもあります。柔軟性が失われると、衝撃で割れやすくなるため、古いプラスチック風防は特に慎重に扱う必要があるでしょう。
ただし、この黄ばみもヴィンテージウォッチの魅力の1つとして捉えることができます。適度な変色は、時計に温かみと歴史を感じさせ、新品にはない独特の雰囲気を醸し出すでしょう。
高級感や質感の課題
プラスチック風防は、どうしても高級感に欠ける印象を与えがちです。サファイアクリスタルの硬質な輝きと比較すると、プラスチック特有の柔らかい光沢は、安価な印象を与えることがあります。
反射防止コーティングなどの表面処理も、ガラス風防ほど効果的に施すことができません。そのため、強い光の下では反射により視認性が低下する場合があります。高級時計としてのステータス性を重視する方には、物足りなく感じられるかもしれません。
しかし、この素朴な質感を好む愛好家も存在します。プラスチック風防特有の温かみのある見た目は、ヴィンテージウォッチの魅力を引き立てる要素でもあるからでしょう。
プラスチック風防の傷消し方法と手順
プラスチック風防の傷は、適切な方法で研磨すれば改善できます。正しい手順と道具を使えば、自宅でも傷消しが可能です。
必要な道具と研磨剤の選び方
プラスチック風防の傷消しには、研磨剤と柔らかい布が必要です。研磨剤は、専用のプラスチック研磨剤や、歯磨き粉(研磨剤入り)が使用できます。中でも、時計用のポリッシュクリームが最も効果的でしょう。
布は、マイクロファイバークロスや眼鏡拭きなど、柔らかく糸くずの出ないものを選びます。ティッシュペーパーは繊維が粗く、かえって傷をつける可能性があるため避けましょう。
傷消しの具体的な手順
まず、風防表面の汚れを水と中性洗剤で洗い流し、完全に乾燥させます。次に、少量の研磨剤を布に取り、円を描くように優しく磨いていきます。力を入れすぎると風防が変形する可能性があるため注意が必要です。
1箇所につき30秒程度磨いたら、きれいな布で研磨剤を拭き取り、傷の状態を確認します。必要に応じて、この工程を繰り返します。全体を均一に磨くことで、部分的な歪みを防ぐことができるでしょう。
最後に、風防全体を清潔な布で丁寧に拭き上げます。仕上げにプラスチック用のコーティング剤を塗布すると、傷がつきにくくなり、透明度も上がるでしょう。
深い傷への対処法
爪が引っかかるような深い傷は、通常の研磨では完全に除去できません。この場合、耐水ペーパーを使った本格的な研磨が必要となります。まず、1000番程度の耐水ペーパーに水をつけ、傷の部分を慎重に研磨します。
傷が浅くなったら、徐々に番手を上げていき、1500番、2000番と細かくしていきましょう。最後に研磨剤で仕上げ磨きを行い、透明度を回復させます。この作業は技術と経験が必要なため、不安な場合は専門店に依頼することをおすすめします。
深い傷が多数ある場合や、研磨により歪みが生じた場合は、風防交換を検討しましょう。無理な研磨は風防を薄くし、強度を低下させる可能性があるため、適切な判断が必要です。
プラスチック風防のメンテナンスと長持ちさせるコツ
適切なメンテナンスにより、プラスチック風防の寿命を延ばすことができます。日常的なケアから保管方法まで、具体的な方法をご紹介します。
日常的なお手入れ方法
プラスチック風防の日常メンテナンスは、こまめな清掃が基本です。使用後は、マイクロファイバークロスで優しく拭き、汗や皮脂を除去します。週に一度は、薄めた中性洗剤で洗浄し、十分に水で流した後、柔らかい布で水分を完全に拭き取りましょう。
定期的に、時計専用のクリーナーで本格的な清掃を行います。時計店で推奨される製品を使用することで、安全に手入れができます。過度な薬剤の使用は避け、必要最小限に留めることが大切です。
指紋や油分が付着した場合は、すぐに拭き取ることが大切です。放置すると、汚れが定着し、透明度が低下する原因となります。外出先では、眼鏡拭きを携帯しておくと便利でしょう。
傷を防ぐ使用上の注意
プラスチック風防の傷を防ぐには、日常の動作に気をつける必要があります。腕時計をつけたまま作業する際は、風防が硬いものに接触しないよう意識しましょう。特にデスクワークでは、キーボードや机の縁との接触に注意が必要です。
スポーツや肉体労働の際は、できれば時計を外すか、リストバンドやカバーで保護することをおすすめします。砂やほこりの多い環境では、微細な粒子が知らないうちに傷をつけてしまうことがあります。
服の着脱時も要注意です。ジッパーやボタン、金属製の装飾品は、風防に傷をつける原因となります。時計を外してから着替えるか、十分に注意して動作することで、不要な傷を防げるでしょう。
保管時の注意点
プラスチック風防の保管は、直射日光を避け、温度と湿度が安定した場所で行います。高温多湿な環境は、風防の劣化を早め、変形や変色の原因となります。理想的な保管温度は15度から25度、湿度は40%から60%程度でしょう。
時計ケースや箱で保管する際は、風防が他のものと接触しないよう注意します。複数の時計を一緒に保管する場合は、個別にソフトケースに入れるか、仕切りのあるケースを使用しましょう。
長期保管の場合は、定期的に状態をチェックし、必要に応じて清掃や保護剤の塗布を行います。また、極端に乾燥した環境も素材の劣化を招くため、シリカゲルの使いすぎには注意が必要です。適切な保管により、プラスチック風防の透明度と柔軟性を長期間維持できるでしょう。
まとめ
プラスチック風防は、傷つきやすいというデメリットがある一方で、軽量性、安全性、修理の容易さなど、多くのメリットを持つ素材です。適切なメンテナンスと取り扱いにより、その特性を活かしながら長く愛用することができます。
傷がついても研磨で修復可能という特性は、他の風防素材にはない大きなメリットです。
ヴィンテージウォッチでは、製造当時のプラスチック風防を維持することが、その時計の歴史的価値とオリジナリティを保つ上で重要とされています。
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「おたからや」での「プラスチック風防の腕時計」の参考買取価格
ここでは、「おたからや」でのプラスチック風防の腕時計の参考買取価格の一部を紹介します。
画像 | モデル | 参考買取価格 |
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オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル 310.60.42.50.99.002 ゴールド | 3,701,500円 |
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オメガ ピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル アラスカ・プロジェクト 311.32.42.30.04.001 | 2,276,000円 |
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ロレックス デイデイト 1803/8 | 1,881,000円 |
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オメガ コンステレーション 168.029 | 807,900円 |
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オメガ スピードマスター プロフェッショナル 311.30.42.30.01.005 | 94,000円 |
※状態や付属品の有無、時期によって買取価格が異なりますので、詳細はお問い合わせください。
プラスチック風防は傷がつきやすい特性がありますが、研磨で修復可能なため、適切にメンテナンスされた個体は高評価となります。特にオメガ スピードマスター プロフェッショナルのようなNASA公認モデルや、1970年代以前のロレックス サブマリーナーなど、プラスチック風防を採用したモデルは需要があります。
風防の透明度と黄ばみの程度が査定の重要ポイントです。オリジナルのドーム型プラスチック風防が無傷で残っているヴィンテージモデルは、希少価値が高く評価されます。
一方で、サードパーティ製(社外品)に交換されている場合や、深い傷により視認性が著しく低下している場合は減額対象となります。経年による適度な黄ばみは、ヴィンテージウォッチの魅力として評価される場合もあります。
- おたからや査定員のコメント
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「腕時計」の買い取りなら「おたからや」
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全国1,540店舗以上のネットワークと世界51カ国との取引実績により、国内外のコレクター需要を踏まえた適正な査定が可能です。
プラスチック風防の状態は査定の重要なポイントです。オリジナルの風防が維持されているヴィンテージモデルは、歴史的価値を含めて積極的に評価しています。スピードマスターのように、あえてプラスチック風防を採用し続けているモデルや、軍用時計として採用された希少モデルは、コレクター需要が高いため高額査定の対象となります。
店頭買い取りに加えて、出張買い取りやオンライン査定にも対応しているため、ご自宅から気軽にご依頼可能です。
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査定員の紹介
木村 査定員

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ギター・音楽鑑賞
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好きな言葉
有言実行
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好きなブランド
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