ETA（エタ）ムーブメントは、長年にわたりスイスの時計産業を支えてきた、世界最大級のムーブメントメーカーです。

しかし、「ETAムーブメントは高級時計にふさわしいのか」「セリタや自社ムーブメントと何が違うのか」「どのキャリバーを選べばよいのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ETAムーブメントの歴史や代表的なキャリバーの特徴、セリタやミヨタとの違い、自社ムーブメントを持つブランドとの比較、さらに搭載されている代表的なモデルまで徹底的に解説します。

ETAムーブメントについて理解を深め、ご自身に合った時計選びの参考にしてください。

ETAムーブメントとは？

ETAムーブメントは、スイスのETA社が手がける時計の内部機構を指します。手巻きや自動巻きといった機械式から、クォーツ式まで幅広く供給しており、エボーシュ（半完成の状態）から完成品まで展開しています。

多数の工場による安定した供給と長年の設計ノウハウがあるため、修理部品や技術情報を入手しやすいのが特徴です。長期的なメンテナンスにおいても信頼性が高いといえます。

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ETAムーブメントの歴史

主流ムーブメントがどのように生まれ、広まったのかを知ると、時計選びのヒントが増えるものです。ここでは、ETAムーブメントの歴史を紹介します。

1793年FHFに端を発するETAの系譜

ETAのルーツは1793年にスイス・フォンテネメロンで創業したFHF（Fabrique d’Horlogerie de Fontainemelon）にさかのぼります。1816年頃には工場生産へ移行し、生産規模を着実に拡大。20世紀に入るとエボーシュSA（ムーブメントメーカー連合）に組み込まれ、その後ETAへ吸収されました。

ETAが掲げる「depuis 1793」の表記は、FHFを起点とする系譜を示すものといえます。さらに、Eternaのムーブメント部門が分離・統合されたことで、複数の流れがETAに集まり、現在の供給体制が形づくられました。

スウォッチグループ傘下としての成長

1982年、SSIHとASUAGの統合でSMH（のちのスウォッチグループ）が誕生し、ETAはグループの心臓部となるムーブメント工房に位置づけられました。1998年の社名変更後は、機械式もクォーツも手がけられる一貫供給モデルを強化。設計から部品製造、組立までをグループ内で完結させます。

一方で、市場シェアの拡大が大きすぎたため、公正取引の観点から当局の監視も並行して進むことになりました。

ETA供給停止問題

2002年、スウォッチ・グループが「2006年限りで自社製エボーシュの外部供給を終了する」と発表したことで、スイス競争促進委員会（COMCO）が介入しました。当初は2008年から段階的に削減し、2010年で完全終了と合意されましたが、業界の反発を受けて最終的に2020年まで供給が継続されることとなります。

スウォッチ創業者ニコラス・G・ハイエクは「他社が自社開発を怠り、ETAに依存して高額販売している」と批判しました。

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代表的なETAムーブメント一覧

ETAの機械式ムーブメントは、大別すると「2824系」「2892系」「7750系」の3系統に分類できます。基礎的な自動巻き、薄型を志向した自動巻き、クロノグラフ用自動巻きという役割分担があり、寸法や持続時間、搭載機能の差異が各系統の設計思想を反映しています。以下、それぞれの特徴を順に見ていきましょう。

ETA2824系

ETA 2824系は、「日常使用に適した自動巻き」として標準的に位置づけられるムーブメントです。

サイズは直径25.6mm（11½リーニュ）、厚さ約4.6mmと汎用性が高く、25石の軸受で摩耗を防ぎます。振動数は28,800振動／時（4Hz）で、秒針が滑らかに動き、パワーリザーブは約38〜42時間。自動巻きと手巻きの両方に対応し、ハック機能も備えています。

日付なし仕様やGMTモジュールへの展開が容易で、実用の幅が広いことも強みです。唯一の注意点は厚さで、約4.6mmあるため超薄型ケースを狙うデザインではやや制限が出やすいでしょう。

ETA2892系

ETA 2892系は、薄型設計を特徴とする自動巻きムーブメントです。直径25.6mm、厚さわずか約3.6mmというスリムさで、日付付き仕様は21石。振動数は、28,800振動／時（4Hz）、パワーリザーブは約42時間です。ローターの支持にボールベアリングを使うことで、巻き上げの抵抗を減らしています。

1970年代に登場した初代2892から進化を重ね、2892-2を経て現在の2892-A2に至るまで改良が続けられてきました。多くのブランドが独自のチューニングを施してきた実績もあり、カスタマイズのベースとして信頼されています。

ただし、薄型設計ゆえにトルクや巻き上げ効率には工夫が必要で、使用環境によってパフォーマンスに差が出やすい点は理解しておきたいところです。

ETA7750系

ETA7750系は、自動巻きクロノグラフの定番として知られるムーブメントです。サイズは直径30.0mm、厚さ約7.9mmと存在感があり、基本構成は30分積算計・12時間積算計・スモールセコンドの3つのインダイヤルに、日付と曜日表示を組み合わせています。25石仕様で、振動数は28,800振動／時（4Hz）、パワーリザーブは42〜48時間です。

特徴は、カム駆動式クロノグラフ機構です。コラムホイール式に比べて、高級感では劣るとされますが、耐久性とメンテナンス性のバランスに優れており、量産機に最適化された設計といえます。1970年代の登場以来、改良を重ねつつ各ブランドがベースとして採用し、7751（トリプルカレンダー＋ムーンフェイズ）、7753（レイアウト変更版）、7754（GMT追加）など派生モデルも豊富です。

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ETAムーブメントのグレード

ETAのムーブメントは、仕上げや部品のグレードによって4段階に分かれています。

グレードが上がるほど装飾や素材の質、調整基準が高まり、精度や耐久性への期待値も引き上げられる仕組みです。

ETAと他ムーブメント（セリタ・ミヨタ）の違い

ETAはスイス最大のムーブメント供給元ですが、供給縮小や価格面の理由から、他メーカーのムーブメントも広く使われています。代表的なものがスイスのセリタと日本のミヨタです。

セリタムーブメント

セリタは1950年創業のスイス企業で、当初はETAのムーブメントを組み立てる下請け（OEM）として活動していました。その後、ETAの特許が切れた設計を基に独自のムーブメントを製造し始めます。

代表的なモデルはSW200・SW300・SW500で、ETAの2824-2・2892-A2・7750に対応する互換型です。SW200は軸受の宝石（人工ルビー）が1石多い26石である点など、細かな仕様に違いがあります。

ミヨタ・日本製ムーブメント

ミヨタはシチズン傘下の日本企業で、ETAやセリタよりも手頃な価格帯の時計に広く使われています。代表的な製品には自動巻きのCal.9015やクォーツ式の大量供給モデルがあります。ミヨタ製は大量生産に適した設計で、世界中のファッションウォッチや手頃な価格帯の機械式時計に搭載されているのが特徴です。

パーツの仕上げや装飾は比較的シンプルで、グレード分けもETAやセリタのような細分化は行われていません。精度調整の幅も限定的ですが、信頼性と耐久性には定評があります。

ETAやセリタが中価格帯から高価格帯を支えるムーブメントであるのに対し、ミヨタはリーズナブルな価格帯で実用性を支える存在といえるでしょう。

自社ムーブメントを持つブランドとETA採用ブランド

時計の世界では、ムーブメントを自社で開発するブランドと、ETAなど外部供給を利用するブランドに分かれます。

自社ムーブメントブランド

自社でムーブメントを製造するブランドは「マニュファクチュール」と呼ばれます。代表的なブランドは以下のとおりです。

ロレックスは古くから外部供給に頼らず自社開発を続け、Cal.3235など効率と耐久性を両立したムーブメントを展開しています。パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンも高精度と美しい仕上げで知られ、ブランドの象徴的存在です。

IWCやオメガはかつてETAベースを多く用いていましたが、近年は自社開発の比率を高めてブランド価値を強化しています。自社開発は製造コストが大きくなりますが、技術力と独自性を示すシンボルとして確立されています。

ETAムーブメントを採用している主なブランド

ETAのムーブメントを採用しているブランドは、安定したベースに独自の工夫を加えて自社らしさを打ち出しています。具体的には以下のとおりです。

このようにETAを採用するブランドは、安定供給と整備のしやすさを背景に、自社のアイデンティティを組み合わせて製品価値を高めてきたのです。

ETAムーブメントが活躍する代表モデル

この章では、ETAムーブメントが活躍する代表モデルを3つ紹介します。

【2824系】チューダー サブマリーナー

ロレックスの姉妹ブランドとして生まれたチューダーは、耐久性の高いダイバーズモデルで知られています。その象徴的存在であるサブマリーナーの一部世代には、ETA 2824-2が搭載されました。中でも、リファレンス79090は、ロレックス譲りの設計思想にETAムーブメントを組み合わせることで、高い実用性と手の届きやすい価格の両立を実現したモデルです。

ETA 2824-2は直径25.6mm、厚さ4.6mm、パワーリザーブ約40時間を備えた安定感のあるムーブメントで、ハック機能（秒針停止）も搭載。チューダーはこれをベースに耐磁性や精度の面で強化を行い、プロ仕様のダイバーズらしい信頼性を確保しました。

【2892系】オメガ シーマスタープロフェッショナル

オメガのシーマスターシリーズは、海洋探検やプロフェッショナルダイバー向けの本格仕様として知られています。

1990年代から2000年代にかけての世代では、ETA 2892-A2を基盤に改良を加えたCal.1120やCal.1128が搭載されました。2892系は厚さ3.6mmという薄型設計に加え、ローターにボールベアリングを採用し、効率的な巻き上げを可能にした点が特徴です。

シーマスターに組み込まれたCal.1120は、クロノメーター規格の高精度調整に加え、オメガ独自の装飾や耐磁対策が施された仕様。さらに、ヘリウムエスケープバルブ付きのケースと組み合わせることで、プロ仕様らしい防水性と堅牢性を確保しました。

【7750系】ブライトリング ナビタイマー

航空時計の代名詞とされるブライトリング「ナビタイマー」は、1990年代から2000年代にかけてETA／Valjoux 7750を基盤としたCal.B13を搭載していました。

7750は直径30mm、厚さ約7.9mmの大型設計で、30分積算計・12時間積算計・スモールセコンドの3つのサブダイヤルを備える点が特徴です。さらに、日付や曜日表示の組込みにも対応し、ナビタイマー独自の航空計算尺と組み合わせることで、プロフェッショナルツールとしての完成度を高めました。

カム式クロノグラフは堅牢でメンテナンス性にも優れ、ユーザーからは「ハードに使える安心感」が評価されています。

ETAムーブメントに関するよくある質問

ETAムーブメントに関するよくある質問に回答します。

ETAムーブメントはクォーツ？

ETAは機械式とクォーツ式（電池式）の両方を製造しています。クォーツ式は高い精度と扱いやすさが特徴です。電池交換が必要ですが費用は抑えやすいでしょう。日常使いで安定した時間管理を求める用途に向きます。

ETAムーブメントの寿命はどのくらい？

適切なオーバーホール（分解清掃）を続ければ長期使用が可能です。潤滑油の劣化や摩耗は避けられないため、3〜7年ごとの整備が目安となります。

ETAムーブメント搭載時計は資産価値がある？

資産価値はブランド、モデル、希少性、状態、需要で決まります。ETA搭載という1点だけで資産価値が保証されるわけではありません。整備履歴や保存状態が良好であれば評価につながる場合もあります。

ETAとエタポンはどう違う？

「エタポン」は日本語圏で使われる俗称です。ETA製の汎用ムーブメントを搭載した時計を意味します。正式な技術用語ではありません。

汎用ムーブメントと自社開発ムーブメントの違いは？

汎用ムーブメントは複数ブランドで共通利用され、部品流通と整備が進んでいます。コストを抑えやすい点もメリットです。自社開発ムーブメントは独自設計で差別化しやすく、設計思想を反映できます。部品入手は限定的になりがちです。

まとめ

ETAムーブメントについて歴史や代表キャリバー、グレードの違い、搭載ブランドなどを解説しました。

信頼性と修理のしやすさを重視するならETAは強い味方ですし、自社ムーブメントと比較することでブランドの姿勢も見えてきます。ポイントを整理すると、以下のとおりです。

時計選びは1度きりの出会いでもあります。自分のライフスタイルや好みに合ったムーブメントを見極めて、納得の1本を手にしてください。

「おたからや」での「ETAムーブメント搭載モデル」の参考買取価格

ここでは、「おたからや」での「ETAムーブメント搭載モデル」の参考買取価格の一部を紹介します。

画像	商品名	参考買取価格
	ブライトリング　ナビタイマー1461 A19370	599,500円
	オメガ シーマスタープロフェッショナル ダイバー 210.30.44.51.01.001	694,000円
	チューダー サブマリーナー 7928/0	943,000円
	ブライトリング ナビタイマー モンブリラン オリンパス A19350	576,000円
	ブライトリング ナビタイマー モンブリラン ブルーエンジェルス H30030.1 PG	450,000円

※状態や付属品の有無、時期によって買取価格が異なりますので詳細はお問い合わせください。

ETAムーブメント搭載モデルは、スイス時計の世界で“信頼の代名詞”として広く使われてきた実績があります。代表的な2824系や2892系、7750系などは、チューダーやオメガ、ブライトリングといった人気ブランドにも採用されており、メンテナンス性と安定した精度の両立が魅力です。査定においては、ブランドやモデル名に加え「どのETAキャリバーを搭載しているか」が評価を左右するポイントとなります。

さらに、精度の維持状況やオーバーホール履歴、防水性能が保たれているかも高額査定につながる条件です。付属品（箱・保証書）が揃っていればさらに評価が上がるため、売却時には忘れずに一緒にお持ちいただくと良いでしょう。

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「おたからや」は、世界51カ国との取引実績と全国約1,550店舗以上のネットワークを活かし、最新の相場や為替の動きを反映した高額査定が可能です。さらに、ETAムーブメントは整備性や部品調達性に優れるため、中古市場でも人気が高く、高価買取が期待できます。

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