紛争ダイヤモンドの完全排除に効果的なキンバリープロセスとは?

ダイヤモンドが数多く採掘されるアフリカでは、ダイヤモンドが紛争の資金源にもなってしまいます。それに対抗するための手段として、キンバリープロセスという制度があります。そのキンバリープロセスとは具体的にどのような制度なのか、どういった背景で生まれたのかを解説していきます。
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あまり聞いたことがない「キンバリープロセス」とは何か
キンバリープロセスとは、紛争ダイヤモンドを取り扱わないという精度です。南アフリカのキンバリーという都市で立ち上げられたため、キンバリープロセスと呼びます。主にアフリカとヨーロッパで広く知られている制度なので、日本では聞いたことがないという人も多いでしょう。
紛争ダイヤモンドは、反政府組織の資金源になってしまうダイヤモンドのことです。数多くのダイヤモンドが採掘されるアフリカでは、反政府組織による紛争が起こることが珍しくありません。その資金源を断つ目的として、キンバリープロセスが制定されました。
キンバリープロセスには国単位で参加し、参加している国は非参加国で産出されたダイヤモンドを取り扱わず、さらに非参加国産のダイヤモンドを取り扱った者を処罰するという法律を定めます。そうして、ダイヤモンドを資金源とする紛争の勢力を弱めるというわけです。
ダイヤモンドの非合法な取引が紛争地の採掘現場で行われている
現実問題として、ダイヤモンドは反政府組織の資金源になり得ます。そして実際に非合法な取引によって、ダイヤが大量の資金と交換されています。ダイヤモンドを採掘している現場では、生活がかかっているため、より良い条件での売却を優先します。またダイヤモンドを必要とする者の中には、アフリカで起こっている紛争のことよりも、良質なダイヤモンドを手に入れることの方が大事だという人がいます。
つまり反政府組織が良質なダイヤモンドを採掘すると、反政府組織に潤沢な資金を与えることになってしまいます。したがって非合法でも構わないから質の良いダイヤモンドを手に入れたいという考えを改めさせるためにも、非合法な取引を排除するための制度が必要というわけです。
ルールの遵守で非合法取引を排除
キンバリープロセスには、厳格なルールが設定されています。まず加盟している国は、輸出するダイヤモンドが紛争に関するものではないことを証明するために、専用の書類を付属させる必要があります。そして輸送途中などに別のダイヤモンドを紛れ込ませることがないよう、密閉した容器を使用しなければなりません。さらに輸出する先は、ダイヤモンドが紛争の元にならないよう、キンバリープロセスに加盟している国に限定されます。
そうした厳格なルール設定により紛争ダイヤモンドの多くは市場から排除され、合法的な取引が行われるようになりました。したがってダイヤモンドが紛争の資金になるのを防ぐ点では、キンバリープロセスは成功と言えるでしょう。
戦いはまだ始まったばかりで、これからが本当の戦い
キンバリープロセスによって紛争ダイヤモンドの市場取引が減ったからといって、それでダイヤモンドに関する問題がすべて解決されたわけではありません。紛争の資金の他にも児童がダイヤモンドの採掘のために駆り出されることや、ダイヤモンドの採掘自体が環境に悪影響を及ぼしているなど、いくつもの問題があります。
さらにキンバリープロセス自体も完璧な制度ではなく、監視の甘さや国が紛争を起こしていた場合には対応できないなどの課題があります。したがってキンバリープロセスができただけでは、まだダイヤモンド問題に対する戦いは始まったばかりと言えるでしょう。キンバリープロセスそのものの改善や、異なる制度の立ち上げやなど、しなければならないことは数多くあります。
まとめ
見た目は非常に美しいダイヤモンドですが、その背景には紛争を始めとするいくつもの問題が見え隠れしています。そういった問題を排除することは、非常に大切です。もし裏で非合法かつ血生臭い取引が行われていれば、そのダイヤモンドは本当の意味で美しいとは言えないでしょう。したがってキンバリープロセスを始めとする非合法の取引を排除する制度は、なくてはならない存在です。そしてその制度には、積極的に参加することが望ましいのです。