金ドル本位制の成立となぜ崩壊してしまったのか

一時は世界通貨の基準となっていた金ドル本位制。もっとも制度が成立してからまもなく崩壊してしまい、長くは保ちませんでした。今回の記事では、金ドル本位制が成立するまでの歴史的経緯と崩壊してしまった理由について詳しく解説していきます。
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前身となった金本位制
金ドル本位制が成立する前には、世界の貨幣基準は金本位制が一般的でした。しかし様々な要因で体制が維持できなくなってしまい、金ドル本位制と取ってかわられてしまったのです。以下では前身となった金本位制について詳しく解説していきます。
大英帝国からはじまった金本位制
そもそも金本位制とは一定量の現物の金と貨幣の単位の価値を、常に同じものにしようとして作られた貨幣制度です。これによってどこでも貨幣と金が簡単に交換できるようになり、世界中で全く文化が異なる国の間でも簡単に貿易ができるようになりました。
この制度を導入したのは19世紀の大英帝国でした。制度を導入することによって貿易をより簡単にし世界での影響力を高めようとしたのが背景に隠れています。当時の日本でも日清戦争に勝利したことによって得られた金を元手に、金本位制の導入がはじまりました。
なぜ崩壊してしまったのか
しかしこの制度も長くはもちませんでした。なぜかというと1914年に第1次世界大戦が勃発したことより、世界中で大恐慌が起きてしまった関係です。金本位制を主導したイギリスでも、武器の売買などによる貿易によって金が大量に国外へと流出してしまいました。そのため貨幣と金のバランスが大きく崩れてしまい金本位制を維持できなくなってしまったのです。
その後世界中のほとんどの国々が戦争や大恐慌の関係で金本位制を維持できなくなってしまいます。そのため金本位制から管理通貨制度へと移行し事実上崩壊してしまったのです。
ブレトンウッズによる金・ドル本位制の成立と崩壊
第1次世界対戦によってその当時世界の中心であったイギリスやヨーロッパ諸国が大きなダメージを負ってしまったことにより、金本位制の維持は難しくなってしまいました。そんな時世界的に経済状態が悪化していく状況を見かねて、大戦の影響を受けなかったアメリカが動き出しました。
ブレトンウッズ体制とは
第2次世界大戦による影響で主戦場となっていたヨーロッパ諸国はもちろんのこと、世界各地が影響を受け経済は悪化し続けていました。そこで世界経済を安定させることを目的としてアメリカのブレトンウッズが各国の首脳陣を集め、ドルと金を交換できることを定めたのです。
またこれに加えて各国の通貨とアメリカのドルの交換比率を一定に保つ固定相場制を導入したことから、この制度をブレトンウッズ体制もしくは「金・ドル」本位制と呼ぶようになりました。
ブレトンウッズ体制に内在していた問題と崩壊
ブレトンウッズ体制は当時では画期的な制度でしたが、制度成立の当初から内在していた問題がありました。それはドルと金が固定相場となっていた点です。
常に価値が同じ状態で安定している一方、そもそもお金とは一体何なのかとの点が指摘されるようになりました。
その後第2次世界大戦によるダメージから復活しつつあった世界中の国々が、経済や貿易面で成長を遂げました。そのことによって金の産出や保有量が追いつかなくなってしまい金・ドル本位制の限界が指摘されるようになりました。
その結果1971年に起きたニクソンショックにより、ブレトンウッズ体制は崩壊し金・ドル本位制から現在の変動相場制度へと移行しました。
その後の世界の貨幣事情
金・ドル本位制は崩壊してしまいましたが、現在の変動相場制度のもとでもドルが常に世界の通貨の基軸である点はかわっていません。そのためドル本位制が続いているといえるでしょう。
現在でもアメリカの経済規模は世界中で群を抜いており、金融市場の流動性も高いことからドルは世界の基軸通貨として大きな役割を果たしています。そのため金・ドル本位制のように制度が崩壊する可能性は少なく、今後もまだまだドルが基軸であることは続いていくでしょう。
まとめ
今回は金ドル本位制が成立するまでの歴史的経緯と、崩壊してしまった理由について詳しく解説してきました。金ドル本位制が崩壊してしまった後でも、ドルが世界の通貨で基軸であることは変わっておらず事実上「ドル本位制」で世界は動いているといってもよいでしょう。