【スモーキークォーツ-SmokyQuartz】

スモーキークォーツは、その名の通り煙のような色合いをしたクォーツの一種です。半透明の落ち着いた色合いが魅力の宝石で、パワーストーンとしても高い人気を誇ります。ここではスモーキークォーツの特徴やお手入れ方法、市場価値などについて、詳しく解説していきます。
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スモーキークォーツの特徴と宝石言葉
二酸化ケイ素が結晶化した鉱物であるクォーツ(石英)には様々な種類がありますが、クォーツは大きく単結晶と多結晶の2種類に分類されます。スモーキークォーツは単結晶のクォーツの一種で、和名では煙水晶と呼ばれています。
煙水晶という名称の通り、煙のような色合いをしているという特徴がありますが、未だに発色要因は明確になっていません。しかし、含有するごく少量のアルミニウムが天然の放射線の影響を受けて、広範囲の波長の光を吸収するようなることで煙のような茶色や灰色になると考えられています。影響を受けた放射線量が多いほど、黒色に近づいていくとも言われています。
また、スモーキークォーツは古来より宝飾品や装飾品として使われてきた歴史がある宝石です。スコットランドでは民族衣装のキルトに合わせる装飾品に使われてきた宝石で、古代ローマでは彫刻を施したスモーキークォーツを印章として使用していたと伝えられています。
加えて、スモーキークォーツは古くから魔除けや厄除けの効果があると信じられてきた宝石でもあります。宝石言葉は、「素直」「責任感」「安定」「くじけない心」などとなっており、現在でもパワーストーンとして高い人気を誇ります。通常の水晶よりも落ち着いた色合いであることから、ブレスレットやネックレスなどとして愛用している方も少なくありません。
スモーキークォーツの色と魅力
単結晶のクォーツの中でも、灰色・黄灰色・黄褐色・こげ茶色といった色合いのものがスモーキークォーツと呼ばれます。単結晶のクォーツには、無色透明なロッククリスタル(水晶)・紫色のアメシスト・黄色のシトリン・ピンク色のローズクォーツなど様々な色合いのものがありますが、これらのクォーツと比べてスモーキークォーツは落ち着いた色合いをしているのが魅力です。基本的に目立ちにくい色合いをしているため、服装やシーンを選ばずに使用できるとともに、老若男女問わずに身に着けることが可能です。
なお、スモーキークォーツの中でも色味が濃く、スコットランドのカンゴーム山地で採掘されるものは、カンゴームやケアンゴームと呼ばれています。カンゴームはわずかながら光を通し、光に透かすと濃い茶色に見えるのが特徴です。
また、カンゴームよりも更に色合いが濃いものはモリオン(黒水晶)と呼ばれます。スモーキークォーツとモリオンは化学成分が同一で、明確に区別するための基準が存在しないため、これらはどちらも黒水晶として扱われるケースが少なくありません。しかし、スモーキークォーツやカンゴームは光を通すのに対し、モリオンは不透明で光を通さないという違いがあるので、専門知識がない方でも簡単に見分けることが可能です。
スモーキークォーツの産出国
スモーキークォーツの主な産出国は、スコットランド・ブラジル・マダガスカル・スイス・中国・オーストラリア・ロシア・アメリカなどです。スモーキークォーツは世界各地で産出されていますが、中でもスコットランドのカンゴーム山地は、古来よりカンゴームと呼ばれる黒褐色のクォーツが産出されてきた地域として非常に有名で、スコットランドではスモーキークォーツが国石として認定されています。また、スイスでは透明度が高いスモーキークォーツが産出されることで知られています。
なお、天然のスモーキークォーツが産出されることは非常に稀ですが、スモーキークォーツはローズクォーツやロッククリスタルなどの他のクォーツに対して人工的に放射線を照射することで作り出すことが可能です。現在市場に流通している多くのスモーキークォーツは、他のクォーツに放射線を照射して作られていると言われていますが、現在のところ自然の力で作られた天然石なのか、人工的に作られたものなのかを判断するのは専門の鑑別機関でも困難とされています。したがって、スモーキークォーツの産出国は、ローズクォーツやロッククリスタルなどの産出国と同じと考えて差し支えありません。
なお、スモーキークォーツは加熱すると色合いが薄くなるという特性もあるため、色合いが濃いスモーキークォーツに対して加熱処理を施してシトリンとして販売されているケースもあります。
スモーキークォーツのお手入れと保管方法
スモーキークォーツは、宝石の硬さを測る基準となっているモース硬度が7と比較的硬いため、扱いやすい宝石として知られています。極端にデリケートな宝石ではないので、基本的には一般的な宝石と同じような方法でお手入れすることが可能です。
日常的なお手入れは、使用後に乾いた柔らかい布で汗や皮脂汚れなどを拭き取る程度で問題ありません。乾拭きでは汚れが落ちにくい場合は、洗面器などにぬるま湯を入れ、その中で毛先が柔らかい歯ブラシなどを使って優しく汚れを落としていきます。ぬるま湯を使っても汚れが落ちないという場合は、食器用の中性洗剤を2~3滴入れて再びブラシで洗浄してみてください。
中性洗剤を使用すれば大抵の汚れは落とすことができますが、洗剤を使用した場合は洗浄後に洗剤の成分が残らないように十分にすすぎ洗いを行いましょう。その後は、柔らかい布で丁寧に水分を拭き取って、自然乾燥させれば作業は完了です。
また、保管の際は他の宝石との接触を避けるようにしましょう。比較的硬いスモーキークォーツですが、ダイヤモンドやルビー、サファイアなどの宝石類と接触すると表面が傷付く恐れがあります。加えて、スモーキークォーツは長時間紫外線に晒されると変色する恐れがあるので、柔らかい布などに包んでジュエリーボックスなどに収納することをおすすめします。
スモーキークォーツの市場価値
上記の通り、スモーキークォーツは他のクォーツに放射線を照射することで人工的に作り出すことが可能です。そのため、スモーキークォーツは他のクォーツと比べて流通量が多く、市場価値も低めです。一方で、より濃い色合いのモリオンは希少性が高いため、スモーキークォーツの数倍程度の市場価値があります。なお、天然のスモーキークォーツと、人工的に作られたスモーキークォーツを見分けることは困難なので、天然石だからと言って市場価値が高まることはありません。
また、スモーキークォーツは一般的に、インクルージョン(内包物)やひび割れ、内部亀裂などが少なく透明度が高いものほど高く評価されます。色合いについては薄すぎても濃すぎても評価は低くなり、石全体の色合いが均一なものが理想です。ブレスレットなど複数のスモーキークォーツを使用するジュエリーの場合は、意図的に色合いが異なるスモーキークォーツを使用していない限り、色合いや透明度などに統一感があるかという点も評価対象となります。
なお、色合いの好みは人それぞれなので、色合いについての評価はそこまで気にする必要はないでしょう。ただし、色合いが濃いものについては、透明度が高いように見えても大量のインクルージョンがある場合があるので、購入する際は注意深く観察することが大切です。
スモーキークォーツの値段と価格相場
スモーキークォーツはクォーツの中では流通量が多いため、比較的リーズナブルな価格で取引されていますが、ルース(裸石)の状態であれば数千円前後で購入できるものも少なくありません。品質が良くカラット数が大きいものの場合は数十万円で取引されているケースもありますが、基本的には高くても数万円程度で購入できます。
また、ブレスレットやネックレスなどのジュエリーに加工されている場合も比較的手ごろな価格で購入できますが、ジュエリーの場合はスモーキークォーツ以外の宝石類が使われているものも多く見られます。スモーキークォーツのみが使われたジュエリーの場合は、数千円程度で購入できるものも多く流通していますが、その他の宝石が使われているものの場合は、十万円を超える価格で販売されているものも少なくありません。
なお、クォーツは大きな結晶が採掘されやすいという特徴があるため、中には数千カラットを超えるスモーキークォーツも存在します。このような大粒のスモーキークォーツには数千万円の値段が付けられることもありますが、大粒になるほど需要が低くなるため、大きな結晶が採掘されたとしても細かくカットされるのが一般的です。そのため、数千カラットを超えるようなスモーキークォーツが市場に流通することはほとんどありません。
まとめ
単結晶のクォーツの一種であるスモーキークォーツは、落ち着いた色合いをしているため、服用やシーンを選ばずに着用できるという魅力があります。比較的大粒なものも流通しているので、観賞用として購入する方も少なくありませんが、クォーツの中では流通量が多いスモーキークォーツは大粒のものでも比較的リーズナブルな価格で購入することが可能です。また、扱いやすい部類の宝石でもあるので、是非お気に入りの色合いやサイズのものを探してみてください。