時計を長年使用していると、オーバーホールが必要になることがあります。
オーバーホールは時計のメンテナンスに欠かせない作業ですが、詳しい作業内容や費用などについて知らない人は少なくありません。
今回はそんなオーバーホールについて詳しく解説します。
Contents
オーバーホールとは何か
オーバーホールは、時計の機能性が損なわれていないかチェックすることを言います。元々は英語の「OVERHAUL」という言葉が語源となっていますが、こちらは点検を徹底的に行うという意味です。
オーバーホールは時計だけではなく、乗り物や楽器などにも使用されている言葉であり、メンテナンスや点検などのシーンに使われています。ここでは時計にとっての「定期健診」という意味合いとして捉えると良いでしょう。
腕時計はとても小さいアイテムですが、その中に様々な歯車が使われています。特にロレックスの場合は、高額製品であることに加え、機械式自動巻きムーブメントと呼ばれる機能が付いているため、オーバーホールは必要不可欠です。
長く使用するためには、時計の内部にトラブルが生じていないかを点検することが大切と言えるでしょう。
オーバーホールはあくまでも点検なので、修理依頼とは異なるものと考えられています。メンテナンスの際は時計をわざわざ分解して、洗浄や交換などが行われるため、高品質な機能性を長期間保つことが可能です。
しかもロレックスの美しい外観もキープできるので、汚れやキズなども最小限に抑えられます。
オーバーホールは、特に自動巻きムーブメントの時計にとって重要な作業ですが、部品が少ない製品でも行うべきです。
例えばロレックスの製品の中では、クォーツの腕時計が比較的シンプルな設計ですが、こちらもオーバーホールが必要になっています。腕時計は歯車という小さなパーツを使って針が動かされており、非常に繊細な造りです。また、防水機能のために採用されているパッキンは、年月の経過とともに劣化してしまいます。
これらは定期的に交換しておかないと、時計そのものが壊れてしまう恐れがあるのです。
ロレックスの製品はステータス性が重要視されがちです。世界的に人気のある高級ブランドだからこそ、製品のクオリティを保つオーバーホールを行っておかないと、せっかくの時計が台無しになってしまいます。
元々丈夫に作られている時計ではありますが、どんなに品質が優れていても定期的な点検は必要です。
どのモデルであってもオーバーホールが大切であることは同じなので、時計が手元にある場合はしっかりと行っておくことを意識しましょう。
オーバーホールをしないと
時計はどうなる?
オーバーホールを怠っていると、時計が故障してしまう原因になる可能性があります。なぜならメンテナンスをしていないと、時計内部にあるパーツの修理や交換などができないからです。
人間の体に例えると、定期健診をしていれば病気の兆候を捉えたり、予防改善できたりすることがあります。
しかし症状が出てから病院へ行くと、重篤な病気に発展していることは珍しくありません。
これは時計にとっても同じことが言えます。大きなトラブルになってしまう前に、オーバーホールを定期的に行う習慣を付けておけば、不具合を最小限に抑えられるでしょう。
故障が初期段階の場合は、小規模なパーツ交換や修理などで済むことがほとんどです。
しかし不具合が大きくなってからでは、最悪の場合ムーブメントそのものに悪影響を及ぼしてしまうことがあり、時計そのものが台無しになってしまうでしょう。部品交換だけではなく、ムーブメント全体を交換する羽目になるケースは珍しくありません。
また、ロレックスの時計には防水目的でゴム製のパッキンが採用されていますが、こちらは経年劣化する部品です。パッキンが劣化すると防水性が失われてしまい、時計が壊れてしまいかねません。
水が少量入ったくらいでは壊れる心配はほとんどありませんが、時計がサビついてしまう原因になります。
また、時計には内部の部品消耗を抑える目的で、オイルが使用されています。オイルは環境によって劣化していると、内部パーツが傷付きやすくなり、時計が壊れてしまう可能性が上がってしまいます。
時刻を表すという本来の機能が失われてしまう可能性が高いでしょう。
オーバーホールはとても面倒な作業だと思われがちで、明確な不具合が見つかるまで放置してしまうユーザもいます。
しかし定期点検を怠ると、症状の悪化を招いてしまう結果になるので、欠かさず行ったほうが良いでしょう。大きな故障を防ぎつつ、劣化した外装を磨いてピカピカにすることもできるため、新品当初の外観に整えるという役割もあります。
ロレックスという高級時計を長く身に付けていくためには、放置せずにオーバーホールを行っておくべきです。
オーバーホールの
具体的な作業内容について
実際にオーバーホールがどのような作業なのかは、時計の種類によって異なります。しかし時計の動作を確認したり、分解したうえで部品をチェックしたりなど、基本的な内容は変わりません。
ロレックスは機械式という機能が採用されていることが多いので、こちらを例にオーバーホールの内容を説明します。
時計を分解する前に、外装にキズが無いか確認しています。着脱したりぶつけたりすると、気を配っていても時計に小さなキズがついてしまうものです。見た目の劣化具合を細かく確認して、どのような処置が必要なのかをピックアップします。
同時に動作チェックも行っているので、時計が問題なく機能するかを確認することが可能です。時刻を設定したのにズレが発生してしまう、防水機能が果たせなくなっているなど、故障が考えられる要素が無いかを点検しています。
事前にトラブルの有無を確認することによって、分解後にどのパーツを交換すべきなのかを判断できるのです。
動作と外観を点検したら、いよいよ分解作業に入ります。最初に行われるのはブレスレットを時計から取り外して、本体からムーブメントを引き出すという工程です。
この際に時計の中身が良く見えるようになるので、水の浸入によってサビが発生しているか確認できます。そしてオイル切れやローターの不具合などが起こっていないかチェックする必要があるため、とても繊細な作業が必要です。場合によっては顕微鏡を使って、部品の摩耗状態を見る必要があります。
点検後はパーツを一つひとつ丁寧に洗浄します。
ピカピカになるまで洗うことで、パーツの劣化を抑えられますが、既に摩耗してしまっている部品については交換が必要です。もちろんそのまま再利用できる部品については、交換を行う必要はありません。
交換にはロレックスの純正部品の新しいものが使用されます。新品のパーツを取り入れることで、時計の寿命を長くすることができるでしょう。パーツがすべてそろったら、組み立て段階に入ります。
このときパーツそれぞれにオイルを塗り、部品の劣化を防いでいるため、潤滑油も新しくすることが可能です。ムーブメントを入れて組み立て終わったら、ロレックス社で定められている精度になるまで調整を行います。
ただ組み立てをして終わりなのではなく、細かい確認調整も欠かさないという点が、オーバーホールの重要性を表していると言っても過言ではありません。
腕時計が防水性である場合は、水による影響を受けないかテストが行われます。ある程度の水圧に時計のケース部分が耐えられるかという検査内容なので、規定をクリアしないとオーバーホールによる調整は終わりません。
こちらが終わると、ロレックスの時計を着けている状態を想定した点検が行われます。最後の点検はゼンマイ部分が正常に作動しているかを判断するテストですが、なんと必要日数が7日間です。
問題ないことが確認されると、ムーブメントに針をはじめとしたパーツを再度取り付けて、腕時計の形に戻します。
オーバーホールはじっくりと時間をかけて、一つひとつの要素を確認するため、比較的大規模な作業です。だからこそ時計の故障や不具合などを防ぐことができるので、品質を保つために大切な工程と言えるでしょう。
ほとんどの時計はオーバーホールで点検や交換が行えますが、ロレックスの場合は例外があります。
それは時計のモデルが古いとされる、アンティーク品である場合です。昔販売された製品の場合は、修理に必要なパーツの在庫が無く、完璧な状態に直すことができません。正規のロレックス社に依頼しても、モデルが古い場合は限界があると思っておいたほうが良いでしょう。
工場ですでに生産されていないモデルについても、オーバーホールを完璧に行うことは難しいでしょう。
部品のみを正規で調達できないので、修理交換に限界があります。特にロレックスの手巻き式モデルは非常に数が少なく、生産が終わっている製品がほとんどです。そのため、修理に必要な部品を調達することが難しくなっています。
オーバーホールの費用は
高いのか
オーバーホールは非常に細かい点検が必要になるため、ある程度の費用がかかります。時計の状態やモデルなどによりますが、分解洗浄のみで済んだ場合でも5~9万円程度の費用が必要と考えたほうが良いでしょう。
もちろん部品交換が必要になった場合は、その費用も上乗せされるので、数十万円以上かかることも珍しくありません。
そして修理費用は、どの専門業者を利用するかによって大きく左右されます。ほとんどのユーザーは、日本ロレックス社のオーバーホールサービスを活用しているので、そちらが定番の依頼先です。
費用は比較的高いと言われていますが、その分オーバーホールが繊細で丁寧だと評価されています。日本ロレックス社の場合は、オーバーホールの基本料金が4万円以上なので、やはり分解洗浄のみで済んだ場合でも、10万円以下の費用がかかると想定しておくべきです。
時計のパーツの中でも、風防部分が最も壊れやすいと言われています。時計を外的要素から守る役割があるため、その分外からの衝撃を受けやすいのです。最近のロレックスでは、サファイアガラスという素材が使われていますが、こちらの場合は交換に約2万円かかります。
アクリルガラスよりも硬度が優れているので、費用もその分高額になるのが特徴です。風防がプラスチック製の場合は、パーツ交換が5千円程度となり、サファイアガラスよりも安価になります。
このように、パーツの素材によって交換費用がまったく違うのです。さらに、風防が劣化しているということは、時計の内部に破損が見られる可能性があります。その場合は修理費用が上乗せになるでしょう。
ブレスレット部分も破損しやすく、オーバーホールの際に高額になるケースがほとんどです。キズが付いているくらいであれば、簡単な研磨作業でピカピカになるので、そこまで心配する必要はありません。
しかし、キズやへこみなどがあまりにも激しい場合は、ブレスレット本体やコマを交換しなければなりません。コマを留めるために使うピンが切れている場合は、費用が1万円と言われていますが、これはステンレス製であればの話です。例えば高級素材とされているイエローゴールドの場合は10万円、よりハイグレードなプラチナは20万円以上かかります。そしてコマそのものが紛失している場合は、ブレスレットがすべて交換になり、より多くの費用がかかってしまうでしょう。
時計のリュウズ部分も、デリケートなパーツであるため、比較的破損しやすいとされています。リュウズが不具合を起こしている場合は、基本的にパーツ交換となる場合がほとんどです。
モデルによりますが、ロレックスのデイトナは、リュウズ交換費用が1万5千円程度となっています。劣化している部品や製品の素材などによって、オーバーホールの費用が全く違いますが、高額になりがちなのは言うまでもありません。
そもそも分解洗浄だけで数万円かかるものです。もちろんロレックス社ではない業者に作業を依頼することもできますし、その場合は費用をある程度抑えられるでしょう。
しかしロレックスの時計は非常に繊細な構造をしており、より高度な技術が必要です。お金がもったいないからと別業者に頼むと、オーバーホールが不十分で故障を防げなくなる可能性があります。
ロレックスのオーバーホールは、社内の実力ある職人に任せるべきです。高額になりがちではありますが、機能性とデザイン性を取り戻した時計が返ってくると考えると、決して悪いことばかりではありません。
オーバーホールの頻度や
タイミングなどは?
オーバーホールに出すタイミングは、機械式時計の場合は、3~5年の間に1度と言われています。しかしこれはあくまでも目安なので、時計の使用頻度によって全く異なると考えてよいでしょう。
例えばスポーツの際に身に付けている場合や、ダイバーズウオッチをはじめ水中で使用しているときは、知らない間に時計が水にさらされている可能性があります。
万が一水が内部に入ってしまっていた場合は、サビがどんどん広がってしまい、故障の原因になりかねません。この場合はオーバーホールの頻度を早めたほうが、不具合を起こすことを避けられるでしょう。
また、時計をほぼ1日中使用している場合も、そのぶん内部パーツが劣化しやすい環境にあるため、こまめにオーバーホールを行うべきです。時計の説明書に詳しいタイミングが書かれていることがありますが、こちらもあくまである程度の目安として考えてください。使用状況によっては早めにオーバーホールを依頼して、品質を保ちましょう。
オーバーホールのタイミングでは無い場合でも、時計にちょっとした不具合がみられる場合も、点検を行うサインです。
例えば正しく設定していたはずの時刻にズレが生じている場合は、内部パーツに異常が起こっているかもしれません。あるいは時計から異音が発生していたり、ガラスケースが曇っていたりする場合も、不具合が起こっていることがあります。実際に異常があるかどうかは、素人が目視するだけでは判断できません。この場合はすぐにオーバーホールを職人に頼んだほうが良いでしょう。
目安とされている3年目に入っていなくても、不具合がある場合は点検をすべきです。
自分でオーバーホール
できるのか
定期的に行うべきオーバーホールだからこそ、費用削減のために自分で実施しようと考える人がいます。
確かにインターネットで検索すると、自分でオーバーホールを行う方法が紹介されているので、素人でも最低限出来てしまうのではと思ってしまいがちです。
最もメジャーなのは、ドライバーやペンチなどの道具を使って時計を分解し、部品を自分で取り寄せるという方法でしょう。この場合は正規のロレックス社を通さないため、部品はオークションサイトやフリマアプリなどで手に入れる必要があります。
自分で調達した部品を取り付けて、元の形に組み立てれば完了です。
しかし、自分でオーバーホールを行うのには、非常に大きなリスクが伴います。手に入れた部品がジャンク品だと、新品に比べて品質が劣ってしまうため、組み立て後に不具合を起こす可能性が考えられるでしょう。
オーバーホールの目的は、修理点検を徹底的に行うことなのに、トラブルを起こしてしまえば意味がありません。
純正部品を入手したとしても、それが新品未使用であるということは考えられないので、やはり組み立て後に不具合を起こす恐れが考えられるでしょう。オーバーホールには、非常に繊細なテクニックが必要になります。
正規店や専門業者でも、知識と技術を十分身に付けた職人が対応しているので、素人が自分で行うべきではありません。
分解をしている最中に時計を壊してしまい、時計を正しく組み立てられなくなる可能性が高いでしょう。もし時計が故障してしまうと、結局修理に出す羽目になり、余計なお金がかかることもあります。
最悪の場合は時計が直らなくなり、二度と使えなくなる事態に発展してしまうかもしれません。いくらお金のためとはいえ、自分でオーバーホールを行うのは避けましょう。
日本ロレックス社にオーバーホールを依頼したいときは、時計を郵送する必要があります。事前に問い合わせておけば、梱包に必要なキットを送付してもらえるので、こちらをそのまま活用するとよいでしょう。
梱包キットは無料なので、費用の負担は一切ありません。都内近郊に住んでいる場合は、丸の内にロレックス社のサービスセンターがあるので、直接時計を持ち込むことも可能です。
ロレックス社にオーバーホールを頼んだ場合は、プロの技術者に直接対応をしてもらえます。パーツ交換が必要になった場合は、必ず正規の新品が使用されるので、ジャンク品や中古を使われる心配はありません。
自分でオーバーホールを行うのと比べると、作業の品質に大きな差があります。
さらに大きなメリットとして、正規修理保証書という書面が発行されるという点が挙げられます。こちらはロレックス社に正規の対応を受けたという証明になり、発行されてから2年間有効です。
万が一時計を売却したいときに有効期間内の保証書が手元にあれば、修理費用が上乗せされることがあります。当然ながら、自分でオーバーホールをしたり、正規以外の業者に頼んだりした場合は、この保証書は発行されません。
まとめ
オーバーホールは、時計に欠かせない大切なメンテナンス方法です。特にロレックスの時計は、ムーブメントをはじめとした内部パーツがきめ細かいため、必ず定期点検を行っておかなければなりません。
オーバーホールをしっかり行っておけば、不具合が小さいうちに予防対策できるので、大きなトラブルを避けられるでしょう。
ロレックス社に依頼をすれば、交換の際に正規のパーツを使ってもらえます。
時計の品質維持のために大切な作業なので、今後も大切に持ち歩きたいならロレックス社に作業を頼みましょう。
ネットにはオーバーホールを自分で行う方法が紹介されていますが、そのまま信じてしまうのは大変危険です。時計を壊して台無しにすることが無いよう、最初からプロにオーバーホールをしてもらいましょう。
愛情を込めてメンテナンスをしていれば、半永久的に時計の品質を保つことができます。
高級ブランド時計の多くは価格改定がされており、新品・中古問わず需要が高まり買取価格も上昇傾向にありますので、売却にはベストなタイミングといえます。
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