世界五大時計の一つに数えられるブレゲは、数々の名作懐中時計を生み出してきました。

時計の歴史を語るうえで、名門ブランドのブレゲは欠かすことのできない存在です。

ブレゲとその懐中時計が刻んできた歴史や、詳しいモデルについて知りたい時計愛好家も多いのではないでしょうか。

今回は、ブレゲと懐中時計の歴史や、復刻レプリカ、懐中時計に着想を得たモデルなどを紹介します。

ブレゲと懐中時計の歴史について解説

ドイツのA.ランゲ＆ゾーネなどと並んで称賛されるブレゲとその懐中時計には、長い歴史があります。

ここでは、世界的な人気を誇る時計ブランドであるブレゲと、その懐中時計の歴史について紹介します。

ブレゲは1775年に創業した老舗ブランド

ブレゲの歴史は、天才時計師として今に語り継がれるアブラアン・ルイ・ブレゲが1775年にパリのシテ島に構えた工房から始まります。創業者は、現代の機械式時計にも採用されている数々の機構を発明し、「時計の歴史を200年早めた」ともいわれています。

ブレゲの創業者が開発した機構としては、「パーペチュアルカレンダー」や「トゥールビヨン」、「ブレゲひげゼンマイ」などが挙げられます。

ブレゲが開発した機構は、腕時計を動かしている機構全体の70％を占めているといわれており、まさに現代の腕時計の礎を築いたといえます。

ブレゲの時計は、科学者や軍人といったエリート層のほか、王侯貴族にも愛されていました。

特に、フランス王妃マリー・アントワネットは熱心な愛好家だったことが知られています。彼女は宮廷を訪れる客人にブレゲの時計をすすめ、ブレゲの名を世に知らしめることに一役買いました。

1783年より「究極の懐中時計」の製作に着手

ブレゲの名前に神話的な彩りを添えているのが、究極の懐中時計「No.160」の存在です。

1783年ブレゲは、マリー・アントワネットの護衛係を名乗る人物から、懐中時計の製作を依頼されました。その条件は、高度な技術や複雑機構、そしてあらゆる機能を搭載した時計を、時間と費用に一切の制限を加えず製作するというもの。

提示された条件を満たす懐中時計「No.160」が完成したのは、依頼から44年が経過した1827年のことです。そのときには、マリー・アントワネットが処刑されてから34年、そして創業者ブレゲが亡くなってから4年が経過していました。

なお、ブレゲは、1999年に時計業界最大の製造グループ「スウォッチグループ」の傘下に入っています。

ブレゲ懐中時計の復刻レプリカは2つ

ここからは、レプリカとして現代によみがえったブレゲの懐中時計を2つ紹介します。

No.1160 マリー・アントワネット

マリー・アントワネットに贈るために製作されたNo.160は、イスラエルの美術館に収蔵されていましたが、1983年の盗難により所在不明となりました。

2004年、スウォッチグループ創業者にレプリカの製作を命じられたブレゲは、現存するデッサンと資料を頼りにその作業を開始しました。

その3年後の2007年、奇跡的にNo.160が発見され、美術館に戻ります。そして2008年、復刻版である「No.1160 マリー・アントワネット」が発表されました。

No.5

こちらは、1786年に発表された自動巻き懐中時計「No.5」を再現したモデルです。ブレゲ創業者の手によるNo.5は、機能だけでなくデザインや装飾においてもブレゲスタイルの原点となったモデルといわれています。

スモールセコンドや60時間のパワーリザーブ・インジケーター、クォーター・リピーター、ムーンフェイズといった機能を搭載しているのが特徴です。また、繊細なブレゲ針やギョーシェ装飾のデザインは、ブレゲならではの優雅さと高級感を漂わせています。

懐中時計に着想を得たブレゲの腕時計5選

ここからは、懐中時計がベースとなっているブレゲの腕時計を5つ紹介します。

トラディション 7097

トラディションは、ブレゲの懐中時計「スースクリプション」にインスパイアされた、デザインや機構が特徴的なコレクションです。

「スースクリプション」には「予約」という意味があり、当時の顧客は予約時に価格の1／4を支払い、受取時に残金を支払っていたといわれています。

「トラディション 7097」は、初期の懐中時計「No.3424」をモチーフにしたモデルです。

左右対称のブリッジが特徴で、レトログラード式のスモールセコンドが個性的なアクセントを添えています。ムーブメントのパーツにはグルネイユ（サンドブラスト）が施されており、大胆なオープンワークのフェイスからその繊細な風合いを楽しめます。

トラディション 7057

文字盤やケースに18Kゴールドを採用した、豪華な印象を与えるモデルです。

パラシュートや可変慣性テンプといった機構を搭載した精妙なムーブメントを、時計の両面から鑑賞して楽しめます。

「7097」同様、ムーブメントのパーツにグルネイユが施されているのも魅力の一つです。ブレゲ針やコインエッジ装飾といった唯一無二のデザインが、エレガントな雰囲気を引き立てています。

ホワイトゴールドのケースにシルバーのダイヤル、ローズゴールドのケースにブラックのダイヤルといった4つのバリエーションがあります。

トラディション 7597 カンティエム レトログレイド

2020年に発表されたモデルで、ダイヤル下部に配したレトログラードの日付表示が個性的です。ケースは直径40mm、厚さ12.1mmと、オーソドックスなサイズ感です。

18Kホワイトゴールドケースにシルバーまたはブルーのダイヤル、そしてローズゴールドケースにシルバーダイヤルの3種類があります。

針の先端に夜光塗料を用いず、ホワイトラッカーを塗布するなど、細部にもこだわった逸品です。ほかのパーツに干渉しないよう、クランク状に折り曲げられた日付表示の針も、個性的なデザインとなっています。

トラディション 7047

ブレゲ発明のトゥールビヨンの特許が認可された1801年6月26日を記念して、2022年の同月同日に発表されたモデルです。

このモデルでは、フュゼ・チェーン・トランスミッションを採用しています。

「フュゼ」とは「鎖引き」の意味で、ゼンマイの巻き上げ量と無関係に安定した動力を供給する仕組みです。フェイスからのぞくフュゼのチェーンは、無骨な印象を漂わせており、機械式時計愛好家の心をくすぐります。

クラシック 7137

ブレゲの「クラシック」は、懐中時計を思わせるラウンドケースが印象的なコレクションです。シンプルなデザインながら、ブレゲ数字やブレゲ針を盛り込んだ、ブレゲならではの美しいダイヤルを楽しめます。

「クラシック 7137」は、懐中時計のNo.5をモチーフにしたモデルです。46時間のパワーリザーブ・インジケーターやムーンフェイズ表示が特徴で、3種類のギョーシェ模様が文字盤に奥行きを与えています。

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まとめ

天才時計技師として名をはせたブレゲの創業者は、No.160などの傑作懐中時計を数多く世に送り出してきました。ブレゲは現在も、創業者の意志を受け継いだ時計を作り続けています。精巧かつ洗練された腕時計を手にすれば、ブレゲの歴史の重みが感じられるはずです。

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