金の刻印はなぜ必要?品質を保証する刻印について解説

金の刻印をご存じですか。刻印は金の純度を表記し、その種類や品質を保証します。また、情報提供だけではなく歴史的に偽物防止にも役立ってきました。ここでは、刻印がどれほど重要か、ご紹介していきましょう。
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そもそも金の「刻印」とは?
金属について議論するうえでの「刻印」とは、貴金属製品がどのような材質からできているかを示すマークのこと。刻印は、金や他の金属がどれくらいの割合で含まれるのかという金の含有量に加え、どこでどのような製造方法で造られ販売されたのか、ブランド名は明記されているか、デザイナ名はあるかなど、多くの情報を与えてくれます。
純金は完全に金のみで、混ざりけのない100%ピュアな金のことです。これも刻印によって、疑うことのない「純金」としての価値を守れます。日本では必ず刻印の表示をしなければならない義務はありません。しかし、貴金属の買取の際、正確にすべてを把握して売買することは非常に困難です。しかし、金はその取引価格も非常に高く、品物の情報を間違えたまま取引が進めば誰かが大きな損害を被ることになるでしょう。そのため、刻印について事前に知識を得ておくことは重要です。
査定の現場では、長年の経験に裏打ちされた感覚と査察眼で金の価値を判断することになります。刻印がある場合は、刻印をチェックすることが、査定する上での大きな判断材料に。また、刻印の義務化がないとはいえ、製造者が刻印を刻むこと自体が、その製品の信頼性につながります。逆に、刻印のない製品は品質の見極めが難しくなり、粗悪品を産出する可能性を大きくしかねません。刻印の持つ意味は、金の価値を支える重要な役割にあります。
刻印の種類
純金は、ほかの金属がまったく入っていないもので、金の中でも一番価値の高い品です。24分率を使っているので、純金=24金と表されます。しかし、その素質は、大変やわらかいのでジュエリーの加工には向きません。柔らかい面が弱点である反面、強みは他の金属と混ざりやすいことです。その素質を利用して合金にすることによって、加工に適した硬さにします。刻印の表示と金の含有量の関係は、下記の通りです。
K22はK24と同様、硬度が低いため、傷は付きやすいのですがジュエリーには向いています。純金に近い輝きがあるので比較的人気といえるでしょう。また、K18は純度もある程度高く、加工もしやすいので、ジュエリーに一番適しています。他の貴金属との割り金で、カラーゴールドの魅力に変身することも容易です。K14は、耐久度が高く、安価なアクセサリーに使われます。しかし、金の品質は下がり輝きも落ちてしまうという難点も。K10は、金と混ざりあっている他貴金属の割合を比べると、貴金属の割合のほうが高いので、K14よりさらに品質が落ちたものです。そのため安価なジュエリーとして出回っています。気軽に金製品を手にとれるのはうれしいことですが、錆びやすかったり肌のアレルギーを起こしやすかったりといった面もあるので、値段が安いこと以外にあまりメリットはありません。金はたしかに含まれているのですが割合は低いので金製品と呼ぶことも少々不自然かもしれません。なお、これまでに解説した刻印別の情報を以下の表にまとめたのでぜひ再確認してみてください。
K24 | 1000 | 24金 | 金100% |
K22 | 917 | 22金 | 金91.7% |
K21 | 900 | 21金 | 金90.0% |
K20 | 835 | 20金 | 金83.5% |
K18 | 750 | 18金 | 金75.0% |
K14 | 585 | 14金 | 金58.5% |
金に混ぜる金属は、銅・銀・パラジウムなどで、銀が多くなれば黄色っぽく、銅が多ければ、赤っぽく、混ぜる割合によって色合いも変化。金に別の金属を混ぜ合わせることで硬くなり、同時にカラーゴールドを産み出すことも可能です。
シルバー地金やプラチナ地金の合金は、硬さを増すことを目的としたものですが、同時に魅力ある色味を加えます。
「18KT」という表示のKTはカラットという単位で、K18と同じです。宝石のカラットは宝石の重さのことですが、金の場合は金の純度のこと。メッキの刻印には、GP(メッキ)・GF・GR・GS・RSP(金張りメッキ)・GEP(電気メッキ)・WGF(ホワイトゴールド張りメッキ)があり、他にもMの文字をつけたメッキの表記もあります。
金を見分ける比重検査
刻印のない貴金属もありますが、その場合は、品質を判断するのに様々な検査方法がありますのでご紹介しましょう。まずは「比重検査」です。「比重検査」は、金やプラチナが他の金属に比べて重いことを利用した検査方法。人間の感覚でも、金やプラチナはずっしりと重く、シルバーやニッケルなどは軽く感じます。金の比重の範囲値が、純金のK24だと19.13~19.51、ジュエリー等に一番よく使われるK18だと14.84~16.12です。プラチナは、純プラチナのPt1000が21.24~21.66、ロジウムが12.44、パラジウムが12.02、鉛が11.36、銀が10.53、ニッケルが8.90となります。純プラチナは最も比重値が大きく、次が純金です。そして、他の金属はかなり軽いということがわかります。例えば、「純金」とだけ表記された刻印の指輪があったとしましょう。それが、純金の比重と同じ程度であれば、おおよそ金の含有量は純金なみであると言えます。
金には「純度」が重要
金の価値を決定するのは、どれほど高い割合で金が含まれるかということ。金とは別のものが混じっていると、その特質は失われ、本来の金とは性質が変わるからです。当然、その価値も下がってしまいます。人類は、古代から自然界に存在する金属として、金の価値を認めてきました。紀元前3000年代に、歴史的にはすでに金を使い始めたとされています。金は豊かさや権力を誇示する意味もあり、特権階級の象徴でもありました。
鉄や銅と違って、金は錆びることがない上、腐食や酸化などがなく、黄金の美しさを保ち続ける特性があります。また、自由自在に形を変えることのできる性質と、いくらでも薄く伸びる性質も。圧力がかかっても、破壊されずに形を変えたり、延びたりします。人類は、そうした特性を自然界から発見し、古代から採掘を続け、現代に至るまで利用してきたのです。
金の純度とは
純度とは、その製品に純粋な金がどの位含まれているかを表す金の含有量の割合です。また、金は100分率が使われる前から使用されていた歴史も関係あるとも考えられています。プラチナや銀は1000分率で表されますが、これは、100分率という概念が普及した後の金属です。
100%の純度を持つ純金は、私たちのまわりにある様々な種類の金の中で、それほど多くはありません。肌に直接ふれるジュエリーや日常で持ち歩く小物に純金が使われることはほぼないのです。なぜなら、硬度の低い純金は日常頻繁に使われる商品に加工することが困難だからです。とても美しく高価ではありますが、やはり日常使いの品ではないことがわかります。
純度による違いと用途
金合金はその純度の違いによって、どのような用途で使いわけられているのでしょうか。前提として、合金はいずれ長い年月のうちに腐食したり劣化したりするのを避けられませんが、あえて金の純度を下げ他の金属で補強することにより、日常使いが可能なジュエリーとして変化しています。
純度を下げず、純金そのままの特質を利用することも行われています。金箔などの伝統工芸品は、2gほどの金を畳一畳分に延ばし、1万分の1ミリの薄さにしたものです。線状にした金糸は絹などと共に使われ、豪華な衣装や刺繍に使われます。さらに、金歯や歯科材料など、医療関係での使用方法も。これは純金の持つ「アレルギーになりにくい性質」を利用しているのです。また食用としても使われます。純金は変化しにくい性質から、消化が行われないので、適量であれば人間が摂取しても害になりません。金は限りある資源であるので、最近ではリサイクルをして活用する方法も多く取り入れられています。例えば携帯電話に含まれる金を抽出するなどして、工業用としての金の開発にも範囲が及んでいるのです。
純金そのものはその品質が確保されるので、コインやインゴットなど資産として製品化されています。他の資産と比べて、経済的な変動を受けにくく、金は安定した資産であるからです。相場が変われば金の価格は変動しますが、金の価値そのものは不変。ですから、どこに行っても、お金に換えられますし、どこの国でも、金自体の価値は変わらないという信用があります。
品位ごとの特徴
続いて、それぞれの品位ごとに特徴を押さえていきましょう。K22は、純金の割合が91.6%でK24とK18の中間の品位です。変形しやすいものの、金の持つ高級感に注目が集まっています。K18は、純金の割合が75%で、活用できる硬度を持ち合わせているので、人気のある資材。また、色合いを出せる素材であることも魅力です。
K14は、耐久性の強さや価格の安さで、手に入りやすいという面はありますが、変色しやすいという欠点も。K14は文房具などに適している素材です。そしてK10は、さらに品質は下がりますが、手軽な値段で購入できるアクセサリーとして出回っています。
ただ、純金はアレルギーを起こすことが稀ですが、肌質の弱い人にとってK10はあまりおすすめできません。 K18とK10を比べた場合、K10は、変形しにくく傷つきにくい反面、衝撃に弱く変色もしやすい素材です。K18は、変色しにくく、輝きもK10より増すでしょう。
純度を表す刻印の記号
刻印は、独特の記号によって貴金属の品質情報を示す役割を果たしています。また、製造された国の文化・歴史なども垣間見ることができるといった特徴も。刻印の示す情報を読み取ることができれば、より詳しくその商品について知ることができます。刻印は目立つものではないので、普段はあまり意識せずにいますが、非常に深い意味を持っているのです。ここでは刻印が持つ情報について詳しく解説していきます。
刻印はなぜ必要なのか?
多くの金製品には刻印が記されています。その理由は、製品に関する情報を正確に伝えるためだけではなく、偽物によるトラブルを防ぐためです。金の供給は、限界に近づきつつあります。1910年からこれまでの間に、採掘可能な埋蔵量の75%はすでに産出され、残りわずかだと推計も。それにもかかわらず、金の需要は増し相場も上昇しています。残念ながらそこに目をつけて粗悪品を売って儲けようとする人たちもいるのです。優良な買収業者ももちろん存在しますが、悪質な買取業者の数も増える傾向に。保有する人各々がまず刻印について知り、自らの金製品についている刻印を確かめることが大切です。
刻印は、ロゴ・製造年月日・名前・デザイナー名・製品の詳細などをダイレクトに打ち、品質を保証します。刻印の情報は様々ですし、書体も種類豊富。はんこのように、きちんと読める書体もありますが、筆記体や普通には読めない書体を使っていることもあります。
ヨーロッパでは、金の純度をごまかした偽物の流通が止まらず、頻繁にトラブルを起こす事態になりました。そうした粗悪品の規制に乗り出し、取り締まる防御政策として刻印を義務化した制度が設立されたのです。
日本においては、造幣局の純度検査に合格すると「ホールマーク」という刻印が表示されます。これは非常に信頼性の高い証明。造幣局の印には、国旗がデザインされています。その隣のひし形の中に金の純度が示されるのです。
刻印の情報の読み解き方
刻印がある貴金属品は、純度や配合物の割合を刻印で生確に知ることができます。実は金で装飾しただけの金メッキにも、それぞれ刻印があるのです。「GP」は金をまわりにはりつけたという意味のPlated(プラチナ)。「GEP」は、電子分解して処理したというElectro(エレクトロ)の意味になります。金メッキには、K10(10金)やK14(14金)という純度の低い金が使われ、非常に薄く傷つきやすくはがれやすいもの。中身が金ではなく、外側も品質の良くない金で作られているので、安価なうえに長持ちは期待できない製品です。
金張りも中身を金以外の金属で作り、外面に金を張り付けた製品。金メッキより厚い金を利用しており、「GF」で表記されます。Fは、Filledの意味で、金張りのことです。「RGP」で表されるRは、Rolledで5%にも満たない金で作られています。このような刻印であれば、実は金ではないと判断されるのです。おそらく買収業者もこのような製品には手を出さないでしょう。一番だまされやすいのは、こうした金メッキや金張りの製品です。買い手側が金だと間違えて購入したり、売り手側が刻印をごまかしたりするトラブルにつながります。
金メッキのほか、銀メッキも古くから使われている加工法。刻印により、メッキであることを確かめなければなりませんが、刻印がはっきりしない場合もあるので、見かけでだまされないよう、できるだけ信頼のあるお店で購入することをおすすめします。
カラーゴールドの場合は、色のアルファベッドにGを加えて表します。具体的な表記はグリーン(GG)・レッド(RG)・ホワイト(WG)・ピンク(PG)・イエロー(YG)。K18がカラーバリエーションがよく、人気があります。
ここで前述の刻印情報と一緒に見ていきましょう。K18RGという刻印があれば、75%の金に銅の割合の多い割り金をした製品であることがわかります。この刻印のあるジュエリーを購入したら、どのような製品か、ということだけでなく、その特徴も知ることができるので使った後のお手入れを入念にしなければならないとわかるでしょう。ジュエリーは肌に直接触れるものですから、製品の特徴から錆びたり変色を起こしたりする可能性があらかじめ見て取れるからです。
アトKとは?金にはいくつか種類がある
金の表記は、マエK、アトKがありますが、アトKには、十分警戒しなければならない点があります。実際の刻印と異なる品質であることも多く、信頼性が低い場合が多いからです。しかし、見た目には本当の金がどのくらい使われているのかを判断するのは難しく、特に海外で製造されるアトKは買収においても避けたがる業者が多いのが実情。アトKというだけで信頼性が低いと判断されてしまう傾向があります。
アトKとは?
日本では、Kを数字より前に出すマエK。アトKは18Kとあらわされ、海外で作られたジュエリーに多い表示です。日本では純金の品質が保証されているので、刻印自体の偽りはめったにありませんが、ごくまれにとても古いジュエリーには、アトKで表示されているものが見られます。アトKは、刻印自体の信頼性に欠けるてしまいます。
金の含有量が、表記されているものより低かったり、金によって純度のばらつきがあったりするような事案があります。中には、まったく金が入っていない偽物や、表記自体があてにならない場合も。特に東南アジアからの金の買収には、警戒が必要です。初めからだます目的で製造されているものもあります見た目は金に見えるので、それを見極めるのに十分な注意と知識が必要でしょう。
しかし、数字のあとにKの表示がなされていても、問題のないケースも数多くあります。アトK表記を使っているブランド・メーカーも少なくないので、そのすべてが悪いわけではなく、製品によって状況が違うことも知っておかなければなりません。
18Ktや14Ktという刻印は、正式な金の刻印です。Ktはカラット(Karat)で、金の純度を示す単位。しかし、宝石に使うカラットは、「carat」で宝石の重さを示します。ほかにも、国名のある刻印は、刻印の状態がきれいできちんとしていれば、数字のあとにKの表記であっても問題はありません。ただ、金の情報と国名の文字が別々の時期に打たれたものであると考えられる場合は、偽物である可能性があります。
金の査定
金の査定には、十分な経験値が必要です。「割り金」は、純金に金属を混ぜて、耐久性や強さを高める方法。特に海外で製造されたものには刻印があったとしても、割り金の割合が正確ではないものがあり、それを見極める査定には非常に優れた感覚が必要です。金を総合的かつ複合的に判断しなければなりません。
しかし、正確な数値で判断するわけではなく、すべて訓練された繊細な感覚に頼るわけですから、人間の離れワザです。金やプラチナは、磁石にくっつきませんから、磁気に反応するかどうかも見極めのヒントになります。比重検査からも、ある程度判断が可能です。
刻印のある場合には、その種類や信頼性などルーペを使って細かく調べます。刻印そのものの情報が、正確であるのかどうかの入念な調査が必要です。破壊して中身を調べたり薬物で反応を調べる方法もあります。このような検査を行えば、偽物かどうかは確実に調べられますが、予想がつく通り、製品を傷つけてしまうことにもなるので実際に行うことは難しいでしょう。
メッキかどうかを調べるには、試金石が用いられることがあります。これは、石で表面を削ってみることです。メッキなら、外が剥がれて中身の銅や銀が見えてきます。さらに、X線による高度な専門機材や、超音波測定器を使用し、金属の中身の様子を検査する方法もありますが、こうした装置は設備費がかかってしまうので、現実的とはいえません。
偽の刻印にはご注意を
金の偽物は、近年私たちの身の回りで多く流通するようになりました。純金だと思って購入したものが、実は刻印が表示するより金の含有率が低いものだったり、コーティングによって純金と見せかけてあったりというケースは少なくありません。混ぜ物の割合や金の張り付けは素人目では大抵わかりませんが、刻印は少しの知識でかなりリスク回避できるでしょう。
刻印の信頼性
先の段落で金の証明をする方法をご紹介しましたが、薬品をかけたり製品を破壊したりする検査方法は現実的ではないので、やはり刻印によって判断することが一番容易で確実な方法でしょう。触ってみた感覚や色味の度合など、かなり熟練された繊細な経験がなければ見分けは難しいとされています。そこで刻印が重要な役目を果たすわけですが、なかには刻印自体の状態が良くないケースもあるようです。
「K14WG」や「K18WG」の刻印の場合、WGはホワイトゴールドの表記ですが数字やKの文字がなく、「WG」だけの刻印だけがされている場合も。これは金ではなくメッキだったりします。つまり、金である記号のK18やK14を避けて、ホワイトゴールドであることだけを表記してあるのです。しかしホワイトゴールドはたいていK18の金が使われており、メッキであるはずがありません。情報の不十分さがうかがえます。
また、たとえ刻印が打たれていたとしても文字が乱雑ではっきりしないケースだったり、汚れや傷なのでつぶれていてきちんとした情報が得られなかったりして、刻印の信頼性に欠ける粗悪品も数多くあるのです。
様々な偽の刻印
これまで見てきた通り、偽物は金の混ぜ物の割合をごまかすもの、内側の金属に金を張り付けてごまかすもの、刻印そのものが信頼できないものと分けられます。
金メッキ・銀メッキ、金張り・銀張りなどは、18・24の数字やG(Gold)・S(Silver)などの文字が紛らわしく、ごまかされてしまう場合も。さらに同じKでも、アトKのK、KPやKTのカラットのKは、意味が違います。アトKは、信頼性が低く、カラットのKは、金の純度を表し、信頼できるものです。
またホワイトゴールド・シルバー・プラチナは、色が似ていることから、素人では騙されてしまうことも。実はシルバーでプラチナの含有量はわずかだったり、銀メッキをホワイトゴールドのように見せかけられていたりする場合があるのです。これらは、刻印によって素材を知ることができますから、ぜひ確かめてみましょう。中には刻印は本物だけども中身が違う、というケースもあるようですが、そのようなケースは日々取り扱っている買取業者でもほとんど目にしないものなので気にしなくてもよさそうです。
また先ほど紹介した造幣局の印についても、偽物の印が打刻されていたという事例が実際にあります。こういった情報は造幣局からも注意喚起されているので、確認してみるとよいでしょう。
刻印の位置はルールが決まっている!
貴金属の刻印は、メーカーによって異なることもありますが、製品によってだいたいの位置が決まっています。ジュエリーは小さいので、刻印自体ないものも。それを利用し、品質保証がなく偽物をつかまされてしまうケースも多く発生しています。日本の場合は、日本工業規格(JIS)や国際標準企画(ISO)が、商品には金属の純度を表示しなければならないと定めています。せっかく購入したジュエリーが価値のないものだったとしたら悲しいですよね。ぜひ、刻印の知識を得て、だまされないように気をつけましょう。
ジュエリーの刻印の位置
ジュエリーの刻印には、大きく分けると4つの種類があります。金属の種類・宝石について・検査合格について・メーカー名です。アイテムにより、4つのうちすべてを示すものもあります。日本では造幣局に依頼してジュエリーの品位検査をして証明をするケースも。指輪はリングの内側または裏側の深い位置に打刻されます。宝石のついた指輪は、宝石の種類やカラット数までも情報として提示していることも。また婚約指輪や結婚指輪は、名前・記念日・メッセージを添えて刻印に表記することもあります。またメーカーのロゴやブランド名、有名百貨店名を入れ、リスエストでアフターサービスをするといったものも。非常に小さな指輪に刻印された情報は満載です。ぜひ確かめてみてください。
ネックレスは取りつけ金具の受け側のプレートに打刻され、ピアスは通常本体内側か側面のポストとキャッチの両方に打刻されます。小さいピアスでは刻印のないケースもあるでしょう。
イヤリングは、両方の裏側または金具の底面に打刻されます。クリップタイプも同様です。ねじで回すタイプは、ねじのつまみに刻印されることが多いでしょう。ペンダントもネックレスと同じく留め金具に刻印されますが、金具のついていないペンダントは裏側や脇に刻印されます。
ブローチは、裏側や針の部分に刻印があります。ブレスレットは、ネックレスやペンダント同様留め金の部分に刻印があり、金具のないブレスレットやバンドルは、本体の内側か側面、またはパーツに刻印が打たれることが多いです。
ジュエリー以外の刻印
ジュエリーではなく、金塊やインゴット・地金型金貨の場合は表面に刻印されています。また、これらの表記には1000分率が使われているのが一般的です。金のインゴットは投資資産として保有されます。金の需要が増す傾向とともに、インゴットを作る企業も数多く存在。インゴットに対する品質は、確実に保証されなければなりません。従って、その情報表示を役目とする刻印は非常に重要です。刻印自体に決して嘘があってはならないですよね。しかし、実際には、投資資金であるインゴットゆえに偽物も数多く存在しています。
インゴットには、品位・ブランド・重量などの基本情報を提示する刻印が打たれます。精錬会社・試金業・輸送会社など、すべての項目にチェックが入り認定された場合に、マークが打刻。そのほか、シリアルナンバーの刻印がされますが、これはインゴット自体の商品管理の意味を持つ非常に重要なものです。インゴットにシリアルナンバーの刻印がない、または消えてしまっている場合は、インゴットとしての信用度は認められず、取引はできないことになります。売買取引に、シリアルナンバーが必要不可欠であること、自分が騙されないようにすることのために、刻印がいかに大切かを知らなければなりません。
世界標準として認められるインゴットは、ロンドン貴金属市場協会とニューヨーク商品取引所によって、グッド・デリバリー・バーとしての品質が保証され「FINEGOLD」(999.9)と表記されます。日本では、金地金の売買は東京商品取引所によって定められたブランドであれば「フォーナイン」(99.99%)の品位。これは安心してもいいでしょう。
金貨は、地金型金貨と記念金貨の2種類。地金型金貨は、投資を目的としていますが、中には、コインの収集目的で購入する人もいます。刻印やホールマークによって、その純度が表示されますが、コインに描かれたデザインを壊さないよう、目立たず小さく表記されるのが普通です。
世界のルールはどうなっている?
日本では、刻印を入れることを法律で定めてはいません。なんらかの印が記載されているのは、企業側が製品の信頼性を確保しようとする安心安全のための取り組みであると言えます。
日本では、虚偽行為をして刻印を打ったり、本物ではない製品を純金だと嘘をついて詐欺の販売だったりした場合には、厳しい処罰が。しかし、表記やマークを打たなければ販売してはならないという法律の規定はありません。海外では、貴金属の粗悪品が横行したり盗難があったりとトラブルが絶えないため、予防策として刻印の打刻が制度として義務付けられている国もあります。
中国の刻印制度について
中国で利用される刻印は、漢字表記。例えば、品位K20同等は「足金」のように表され、印台という指輪には、「純金」という文字の刻印が入っています。刻印は漢字で記されているため、中国製であると予測がつきますが、中国圏の刻印は警戒が必要。これは含有量の金が純金に満たないことがあるからです。「シナ金」と呼ばれ、黄色味を帯びており、純金と刻印が打たれていても、22金程度で、金の純度が少ないことも多いのです。中国の刻印に対する信頼度は、決して高くはなく、その真偽が問われ買収業者も常に警戒しています。
フランスの刻印制度について
ヨーロッパの国々では、貴金属製品に共通の刻印を運用するホールマーク条約が結ばれました。フランスはこの条約に加盟しておらず、昔からの独自のマークもたくさんあります。刻印制度は歴史的に古く、国内用、輸出用、輸入用などたくさんの種類が。フランスでは、国が厳しく管理しているので、刻印を正確に読み取れれば、ほぼ間違いありません。
年代物のジュエリーの場合、まったく刻印が入っていないものもあります。使っているうちに、劣化して消えたり、薄れてしまったり、小さ過ぎて打たなかったり理由は様々です。1838年以来、金のホールマークとして使われているのは、ワシの頭の絵。これは、K18以上の金に刻印されており、今から100年以上も前から存在していた刻印です。
それ以外に、馬の頭のホールマークもありました。地域によってもデザインが異なり、その時々の時代背景や地域の事情を知ることができます。フランスでは、18金以下は、金製品として認めないと厳しく定められています。
イギリスの刻印制度について
イギリスのホールマークの歴史は古く、1300年頃から使われ始めました。エドワード一世が品位を証明したのが最初で、制度として設立されることになったと言われています。その頃から今日に至るまで、刻印制度の歴史は700年以上にも。AssayOfficeで公的にホールマークを管理し、制度を維持しています。
また現地では貴金属に印を打たなければならないという法律がありますが、1g以下の小さなアイテムには、刻印はなくてもよいという決まりも。「ホールマーク」と呼ぶようになったのは、金細工職人がギルド本部のホールで刻印を打刻したことに由来するという説があります。補足ですが、印のデザインは王冠で、純度が表示されており、また王室関連の記念刻印が出されるなど国の特色を物語る制度です。
金以外の貴金属にも刻印がある
金以外にもさまざまな貴金属に刻印が存在します。アルファベットの組み合わせが数多く使われ、紛らわしいものも。Pがプラチナなのか、Pinkなのか、同じPでも品質を表すのか、色を表すのかによって全く別物になります。ここでは改めてプラチナの刻印やシルバーの刻印について紹介していきます。
プラチナの刻印
プラチナはPtと刻印で表し、1000分率が使われています。2012年にPt999と表記が統一されました。それ以前は、Pt1000という刻印で、両方とも品質には変わりはありません。ただし、Pt100を見かけても、100%を意味するものではないので注意が必要です。PtではなくPmと表記されている場合は古いプラチナ製品で、純度も表記の数字と合わずプラチナの含有量が低いか可能せいも。現代の地金は、硬度と純度の両方を増した製品の開発が行われています。プラチナは、シルバーと比べると重みがあり、白い輝きは今日まで長く愛され続けています。
シルバーの刻印
シルバーは、SILVERやSVなどと刻印されます。この2つに違いはなく、打刻するスペースによる場合が多いようです。92.5%以上の純度のシルバーはスターリングシルバー(SV925)と呼ばれ、全体の7.5%未満が銅などの割り金。スターリングシルバーは、純銀とは異なる光沢があり、魅力があります。シルバーは、黒ずんでしまうことが多く、ジュエリーを使った後のお手入れが大切。傷つきやすい素材なのでこすらず、アルミホイルで処置します。
その他、カラーシルバーとして、ピンクシルバー(PS)やイエローシルバー(YS)も人気です。メッキも刻印で示されます。表面的には同じような銀製品に見えても、刻印によってその製品では何がどの程度配合されているかがわかるようになります。
まとめ
刻印は貴金属の情報源です。刻印から、金の純度・種類・合金の違いもわかります。各国それぞれの刻印をみていくことで貴金属を守ろうとしてきた刻印の歴史的背景や文化にもふれることができるでしょう。身近な金製品を手に取って、刻印を読み取ってみませんか。