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エルメスの双璧であるバーキン
とは
歴史と起源に迫る話

エルメスを代表するバッグと言えばケリーとバーキンに他なりません。
この二つは似ているデザインですが、オリジナルの起源は同じバッグに行き着きます。今回は名作中の名作バーキンが生まれた背景を含めて迫っていきます。

エルメスの創業期のスタイル

エルメスがパリのマドレーヌ地区バス・デュ・ランパール通りに創業したのは1837年のことでした。創業者のティエリー・エルメスはドイツから単身この地へやって来て、レザークラフトを学び独立して工房兼ショップとして馬具専門店を開設しました。
当初はブーツや手綱や鞍などを製作し、細々とした経営を行いながら自分のスキルとお店の認知度を磨いていきました。若くして両親や家族を失ったティエリー・エルメスは、勤勉で確かな腕を持っており責任感の強い青年だったのです。

工房の経営も軌道に乗り、1867年には第二回万国博覧会のクラフト部門で銀メダルを授賞しエルメスの名前はフランス中に広まりました。二代目シャルル・エミール・エルメスは工房をエリーゼ地区のフォーブル・サントノーレ24番地に移転し、この工房が現在のエルメスの本店になっています。この時代はまだ馬車が全盛の頃で、事業も堅実に上昇していきました。

シャルル・エミール・エルメスの時代に現在のエルメスを語る上で絶対に欠かせない名品が生まれます。それは馬の鞍を収納して運ぶオータクロアというバッグの誕生でした。頑丈なボディにフラップを付けてベルトで補強する現在のエルメスを彷彿とさせるデザインであり、重い馬の鞍を運んでもびくともしない耐久性を持っていたのです。

実はケリーやバーキンも元をたどるとこのオータクロアが原形になっております。まだ馬が人々の交通の要だったので馬具だけではなく馬具を運ぶ鞄も重宝されました。エルメスの名声は万博以降国内に留まらずに周辺各国まで鳴り響いていたのです。

三代目のエミール・モーリス・エルメスは熱心な営業マンでした。ヨーロッパの王族や貴族や富裕層に自社の馬具やオータクロアを紹介して、オーダーメイドで顧客の気に入る製品を生み出していきます。時の権力者である皇帝ニコライ二世にもセールスを行い、見事に馬具と鞍を購入してもらったと伝えられています。こうした生産活動と営業活動が実を結び、エルメスは確実に成長の道を進んでいきました。

バーキンの誕生エピソード

ここではバーキンの誕生エピソードについて紹介します。
1981年、エルメスの社長ジャン=ルイ・デュマは、ロンドン行きの飛行機の機中で美しい女性の隣席になりました。彼女の名前はジェーン・バーキン、女優にして歌手であり世界で最も有名な女性の一人でした。

ジェーン・バーキンの足元には籐のカゴバッグが置かれており雑然とした中身が見える状態でした。世界を飛び回りながら忙しく子育てをするジェーン・バーキンは、隣に座った男性が世界的な皮革ブランドのエルメスの社長と知ってか知らずか身の回りの物を収納して哺乳瓶を直ぐに取り出せる洒落たバッグが無いことを嘆きます。

ジェーン・バーキンの言葉に頷いたジャン=ルイ・デュマは、二つ返事で必ず気に入るバッグをプレゼントしますと約束しました。ジャン=ルイ・デュマは得意な創造性を活用しながら、オータクロアからサック・ア・クロアを経由して新しいバッグを作り上げます。そうして作り上げられたのがバーキンです。
最初に使ったのはもちろんジェーン・バーキンです。自らの名前が冠されたエルメスのバッグはラフに使っても壊れずに長年愛用されたと言われております。

ケリーは繊細でフォーマルな印象でありハンドルは一つですが、バーキンはハンドルを二本持ち左右のマチをストラップで広げられる構造です。子育て中で手荷物が多いジェーン・バーキンに配慮して製作されたので、少ない荷物にも荷物が増えても対応出来る調節機能を重視しました。
フラップを開ければ大きく開口部が開き、哺乳瓶を取り出すことにもストレスはありません。カフェの床に置いても汚れないように安定感の高い底部には頑丈な底鋲を打ってあります。ぶつけたりしても大丈夫なようにパイピングで角部分を柔らかく仕上げているのが特徴です。エレガントでありながらマザーバッグとしても使えるだけの実用性を重視したのがこのバーキンの特徴になります。

ジェーン・バーキンはオリジナルの40センチサイズを愛用しましたが、日本ではワンサイズ小さ目の35センチや30センチが人気です。使いやすく見た目よりも荷物が入り実用的で、誕生から数十年経っても色褪せない魅力があるのがバーキンになります。

品質の良さが魅力的なバーキン

エルメスの歴史を紐解いてゆくと、馬具製作に打ち込んだ歴史が技術力の背景になっていることが分かります。馬に負担をかけずに人間が使いやすいようにデザインされた馬具は、見た目だけではなく機能する道具でなければなりません。

ステッチが太過ぎたりなどが原因で擦れてしまうと、乗馬中に馬具が壊れて人間が落ちてしまいます。それだけではなく、馬は装着の具合が悪い鞍を乗せられるとストレスが溜まり気性が荒くなってしまうのです。人にも馬にも優しく安全性が求められる道具であり、座り心地も見た目もエレガントであることは貴族や王族が乗馬を嗜みにしていたことも背景になっております。

馬の鞍作りや馬具作りで鍛えられたスキルとノウハウ、感性やデザインの追及は、後にモータリゼーションの時代を迎えた時にもエルメスを支える財産になってくれました。使いやすく構造的に頑丈でありながら、しなやかでデザイン性が良いこと、ラゲッジバッグに必要な機能を全て兼ね備えていることでエルメスのバッグは世界中で人気です。

素材選びから独自の製法まで馬具作りからフィードバックされたノウハウは少なくありません。自動車や公共交通機関が移動手段を変えましたが、人々の生活スタイルの中で移動中に荷物を持ち運ぶことは現在も変わっていないのです。より時代に適合したバッグのスタイルを追求してゆくとエルメスに到達することも必然になります。

エルメスは伝統的な技術を使って世界中から集められた最良の素材の一番良い部分だけを使い製作を行います。レザーは部位によって伸びやすかったり柔らか過ぎたり厚みにムラがありますが、エルメスは最も品質が安定して丈夫な背中側の部位のレザーしかバッグ本体には使いません。だからこそ長年の酷使にも耐えられますし、昔ながらのハンドメイドで作られているので修理対応も可能なのです。

エルメスは各国に専門窓口を設けてアフターサービスを重視しています。ステッチ穴を活用しながらなるべく元の状態に戻し、修理後にも長く使えるように修理を行うサービスを提供しています。エルメスのバッグは高額ですが、優れた職人が最良の素材を使いハンドメイドで製造していることを知れば納得の価格になります。

バーキンの魅力は使いやすさ

ここではバーキンも魅力である使いやすさについて紹介します。

バーキンは革が柔らかいため肌心地が良く、サイド部分はベルトによって厚みを変えられるようになっており、台形で底部にゆくほど広がっており安定感は抜群です。しなやかでアクティブな印象は、ケリーの姉妹モデルですが大きく異なる印象を与えてくれます。

ケリーは一本だけのハンドルで出来ておりますが、バーキンは左右から二本のハンドルで構成されています。このハンドの部材は六種類の素材を使い、手に握った時に滑らずに持ちやすく耐久性が高いような構造をしております。また、クロアとターンバックルでフラップを挟み込み、開口部を確実に閉めることが出来てかつ、さらにカデナにより南京錠を付けることが可能で、これは原型であるサック・ア・クロアと呼ばれるバッグが旅行カバンとして活躍した意匠の流れだと言われています。中央のフラップは金属のベルト通しで確実に固定も可能です。
内部へのアクセスがしやすいのも特徴になります。フラップを開けるとフロントにオープンポケット、背面にファスナーポケットが装備されていて、小物の整理がしやすい最適なデザインになります。これらの説明だけでも非常に使いやすい鞄であることが分かります。

エルメスのサイズ展開

現在、バーキンは通常モデルは25センチ、30センチ、35センチ、40センチの4パターンが用意されています。エルメスの特徴ですが同じモデルでも定番商品は複数のサイズ展開をすることが知られています。体格や収納の関係から選んで、自分のライフスタイルに一番合う大きさを愛用することが出来ます。不思議なことに同じデザインでも大きさが変わると同じバッグとは思えないほど印象も変化するのもエルメスの魅力です。

最近特に人気が高まっているバーキンの25センチサイズと35センチサイズについて紹介します。
25センチモデルはバーキンのサイズ展開の中で最も小さいサイズで、カジュアルなハンドバッグという印象が強くなる製品です。最近ではミニバッグの流行や外出時の荷物を少なくする方が増えたことにより、人気が高まっているサイズになります。30センチモデルはカジュアルさを残しながらエレガントさをより際立たせた魅力をもっており、容量も相まって昔から最も普遍的な人気を誇っています。

このように、エルメスのバッグはサイズ展開により使うシーンを変化させることが出来ます。ビジネスからフォーマルまでユーザーの人生に寄り添ってくれる魅力があります。アフターケア体制にも力を入れているので、愛用のバッグが壊れてしまっても修理対応が可能です。ジェーン・バーキンがバーキンバッグをラフなマザーバッグとして使ったように大切にしながら愛用の道具として活用するのがエルメスの使い方です。

エルメスのバッグの素材

バーキンは定番モデルなので色や素材も数えきれないほど豊富なことも特徴です。最も一般的なのは牛革であり、カウハイドやステアハイドなどを使って素材にしています。このレザーは世界中で生産されますが、天然資源の副産物でありランクもさまざまになります。エルメスは最も良質な素材のみを世界中から集めてアトリエに保管し、その世界最高のレザーを使って優れた職人が時間をかけてバッグまで仕上げることで高い品質を保っているのです。

レザーの仕入れ先はタンナーと呼ばれており、世界にはタンナーのブランドも少なくありません。有名なのはフランスにあるデュプイ社やアノネイ社になります。生後6カ月までの子牛の革を鞣し、銀面を美しくしなやかに仕上げたレザーは美しく繊細で手触りも最高の牛革です。
デュプイ社やアノネイ社のボックスカーフの最良のグレードがエルメスに納品され、アトリエで温度と湿度を管理しながら鞄に加工されるのを待ちます。レザーだけではなく底鋲や芯材や内装材までエルメスは最良を求め完璧を追求しています。だからこそ鞄になった時に気品がありながら極めて高い耐久性を維持します。

レザーは他にもドイツのぺリンガー社やWEINHEIMER社などから仕入れていることが有名であり、他にもヘンローンー社や、エキゾチックレザーが得意なタンナーブランドなど素材別にエルメスの眼鏡にかなった物だけが仕入れされてストックされています。

ここでバッグに使われている革の一例を紹介します。ボックスカーフは艶消しと艶有りモデルがあり、美しい光沢やマットな質感を楽しむことが出来ます。黒や濃いブラウンならば落ち着いているのでビジネスシーンでも利用可能です。リザードやアリゲーターならばリッチな雰囲気を楽しめますし、軽く丈夫な山羊革であるならば収納を多くしても手の負担が少ないなどのメリットがあります。

エルメスのオーダーメイドシステム

エルメスのバッグはハンドメイドであり、その年により素材の関係から作られるアイテムも変動していきます。定番モデルでも素材を確保出来なければ一部のサイズの出荷が少なくなることもありますし、素材が確保されればスペシャルなモデルが誕生することもあります。
ハンドメイドで一つの鞄を作るのに平均20時間以上の作業時間が必要になります。一人の職人が糸作りから完成まで行いますので量産は出来ません。だからこそ年間で生産出来る数はあらかじめ決まってしまうのです。これが逆にエルメスの名声を高め、品質を維持している魅力でもあります。

バーキンやケリーなどの定番モデルは、パーソナルオーダーというサイズや素材や色を指定出来るパターンメイドシステムがあります。自分のオリジナルバッグを持てるということで大変人気で、条件もあると言われています。
指定出来るのはハンドルやフラップなどの部品単位であったり、縫製糸のカラーや内装などの細かい部分もオーダーが可能です。バーキンにはクロアやベルト通しなどの金具が使われますが、この金具の色合いも選ぶことが出来ます。マットなシルバーやゴールドなど通常にはない物を選んでみてもいいかもしれません。

サイズや縫い方や素材、カラーのバリエーションを変更すれば定番モデルでもスペシャルな逸品になります。素材によっては選べないカラーもありますし、それはカラーの見本帳を参考にしなければなりません。アトリエとの相談が必要であり、要望を伝えて変更しなければならないオーダーもあります。

パーソナルオーダーが気になる方は詳しくはエルメス直営店に問い合わせてみることをお勧めします。

まとめ

今回はバーキンの誕生から魅力まで幅広く紹介していきました。値段以上の魅力が沢山詰まった商品ですので、購入を検討している方はカラーやサイズごとの違いを比べながら使うシーンの想像をしてみると良いでしょう。一生に一度は手にしてみたいバッグです。

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