今回は日本でも人気のハイブランドの中からルイ・ヴィトン、エルメス、フェンディに絞って紹介していきます。
Contents
昭和の高度成長期に
流行拡大したハイブランド
日本では高度経済成長期に様々な海外製品が輸入されるようになりました。輸入製品は国産品に比べると割高であり、誰もが手を出せるものではありませんでした。しかしながら、気軽に購入できないことに価値があるとみなされ、特にアメリカやヨーロッパのハイブランドに人気が集まり、それを手に入れることが成功者のステイタスとみなされるようになっていきました。
こうした背景があり、ヨーロッパの老舗メゾンのハイブランドであるルイ・ヴィトンやエルメス、フェンディの他、シャネルやセリーヌなども高度成長期に人気のブランドとなっていきました。ニュータウンに家を購入し、当時の三種の神器である冷蔵庫やテレビ、洗濯機を購入できるようになると、自尊心を満たす海外ハイブランドに多くの人の関心が集まり、少し無理をしてでもそれらを購入しようとする動きがみられるようになりました。海外旅行をする人も現代に比べて少なかった当時は、高価で希少性があるブランド品に対し多くの人が羨望のまなざしを向けていました。高度成長期から徐々にこうしたハイブランドの流行がみられるようになりました。
昭和の高度成長期から大流行の
ヨーロッパハイブランドの
ルイ・ヴィトンやエルメス
フェンディのバッグ
昭和の高度経済成長期はサラリーマンの給与が右肩上がりで、生活の質もみるみる向上するようになりました。住まいや家電などの生活基盤が整うと、持て余しているお金をファッションに使いたい人も多くなっていきました。高度経済成長期には大阪万博や東京オリンピックも開催され、遠いヨーロッパやアメリカのファッショントレンドがテレビで報道されるようになったり、海外の要人やハリウッド女優、女性アスリートも日本に大勢やってきました。
すると多くの日本人が、今まで見たことのないファッションをテレビや雑誌で目にするようになり、興味や関心を強く抱くようになっていったのです。来日したハリウッド女優が身に着けていたジュエリーはどこのブランドであるか、メダリストが着ていたスーツやミニスカートはどこの製品かが話題となり、それを真似して購入する人も多くなっていきました。それらの海外VIPや要人が多く身に着けていたのがルイ・ヴィトンやエルメス、フェンディ製品で、次第に日本にもこれらのブランドが流行拡大していきました。
なかでもハリウッドで人気女優だったグレース・ケリー王妃の動向は日本人女性の関心が高く、彼女のファッションを真似する女性が多くいました。彼女はたびたび訪日し、有馬温泉など観光地を巡ったこともあります。グレース王妃の首元のパールのチョーカーを真似する女性がいたり、妊娠中のおなかを隠すために持っていた大きなエルメスのケリーバッグが注目を集めるなど、その影響力はすさまじいものがありました。彼女はフェンディの毛皮のコートやルイ・ヴィトンの旅行バッグなども愛用し、日本でもたびたびそれが報道されていました。
昭和当時に流行した
ルイ・ヴィトンバッグと
現代でも人気のモノグラム
シリーズと進化系バッグ
昭和当時、女性のバッグは手提げ型のハンドバッグが主流でした。コンパクトで物の出し入れもしやすく実用的で、またハンドバッグはショルダーバッグと比較しても品があり、奥ゆかしい雰囲気が日本人女性に受けていたのです。高度経済成長期にはまだ着物を身に着ける女性も多く、ハンドバッグは洋装と和装どちらにもマッチするのでニーズが高かったわけです。
当時流行したルイ・ヴィトンもハンドバッグが人気となりました。ルイ・ヴィトンのパピヨンは、そのフォルムが日本人女性のニーズにマッチして大流行になったのです。銀座の歩行者天国を歩けば女性の誰もがパピヨンを持っているほどで、爆発的人気であったと言っても過言ではありません。筒状のデザインが斬新で、ブラウンを基調にベージュ系の幾何学模様がファッションのスパイスとなり、装いのワンポイントとなりました。
ルイ・ヴィトンの幾何学模様はもともと日本の家紋からインスパイアを得て開発されたものであり、モノグラムシリーズと言われています。モノグラムは日本の家紋を想起させるデザインであり、日本人も抵抗なく自然に受け入れられるデザインであったことが爆発的流行になったと言われています。またモノグラムのパピヨンは着物にコーディネートしても違和感がなく、幅広い年齢層に受け入れられたのも大流行の要因の一つと言えます。今もモノグラムシリーズはルイ・ヴィトンを代表するシリーズで最も人気があります。現代ではグラフィックデザイナーや様々なアーティストとコラボレーションし、モノグラムに鮮やかなペイントを施した進化系バッグも発表され人気となりました。日本人アーティストである村上隆や草間彌生とのコラボはまだ記憶に新しいでしょう。
昭和当時に流行した
エルメスのバッグと
現代トレンドの
エルメスバッグの
バーキンやケリー
東京オリンピック、大阪万博が開催される中で、世界中が日本に注目するようになっていきました。アジアの島国でありながら高度成長を遂げ、先進国の仲間入りをした日本に多くの関心が寄せられ、各国王室やハリウッドスターが次々来日したのもこの時代です。1ドル360円の時代には、現代のように一般人が気軽に海外旅行をすることはできなかったため、来日する海外セレブに多くの日本女性がくぎ付けになりました。メディアで報道される来日したセレブのファッションに衝撃を受け、その装いやエッセンスをまねてセンスアップしたいという願望が高まっていったのもこの時代です。
王室のセレブやハリウッドスターはエルメスのバッグを持って来日することも多く、多くの女性がエルメスのバッグを羨望のまなざしで見つめていたのです。しかし、エルメスの正規店は1979年に丸の内に1号店ができたばかりであり、誰もが気軽に正規店で買い物をすることは難しい時代でした。エルメスのバッグが注目され人気となったものの、手に入れられるのはごく限られた日本の富裕層のみでした。
当時はエルメスのボリードなどが人気であり、それを持てる人は外交官夫人や旧宮家婦人といった人たちだったのです。その後バブル経済期にはエルメスの正規店が全国に拡大し、現在では日本中にエルメスの正規店があり、多くの女性が買い物を楽しめるようになってます。エルメスは中古市場でもニーズが高いです。女優のジェーン・バーキンのために開発されたバーキンや、グレース王妃の愛用品だったケリーが日本では爆発的な人気で年々価格が高騰し、資産保全として持っている人も珍しくありません。
昭和当時に流行した
フェンディバッグと
現代リバイバルで人気の
マンマバゲットシリーズ
日本には豪雪地帯もあり、そのような地域では気温が氷点下20度を記録することも珍しくありません。こうした地域では、ロシアやカナダなどの寒い国と同程度の防寒対策が必要になります。そのため日本では昔から毛皮やファーを防寒着として用いる文化がありました。ワシントン条約以前の昭和の日本では、ミンクのコート、チンチラのジャケットなども女性に多く愛用されていたのです。
高度経済成長期が追い風になり、毛皮の高級老舗メゾンであるイタリアのフェンディは日本人に大変愛されるブランドとなりました。フェンディはもともと高品質な毛皮や皮革を扱うメゾンとして、ヨーロッパの貴族や王室に愛されていたブランドです。そのためフェンディでは高品質な防寒性の高い毛皮のコートやショールを購入することができ、日本人でもフェンディを愛している人が多いのです。
フェンディの毛皮のコートを1970年代に手に入れることができた人は、旧華族や大使館夫などに限られていました。その後フェンディは高度経済成長期からバブル期にかけて日本に多くの正規店を開店し、毛皮以外にバッグなども販売するようになりました。
フェンディを象徴するズッカ柄は、アルファベットのFの組み合わせがスタイリッシュでインパクトがあることから日本人に受け入れられ、ズッカ柄のバッグは高度経済成長期からバブル期にかけて大流行しました。また、バブル期にはマンマバゲットシリーズが流行しました。小脇に抱えるショルダーバッグで、ストラップが短いのでハンドバッグとしても用いられる利便性の高いバッグです。開口部にFのブランドロゴ金具があしらわれ、インパクトがありつつ洗練されたデザインです。令和の現代では、バブル期に流行したマンマバゲットがリバイバルで人気となっています。
まとめ
大阪万博、東京オリンピックが開催されたことで海外要人が来日し、セレブのファッションが頻繁に報道されました。そこでセレブが身に着けていたのがルイ・ヴィトン、エルメス、フェンディなどのヨーロッパ老舗ブランドアイテムだったのです。ルイ・ヴィトンのモノグラムは家紋をモチーフにしたデザインで日本人に受け、高度経済成長期にパピヨンが大流行しました。エルメスのバッグはボリードに始まり、現代ではグレース王妃が愛したケリーバッグやジェーン・バーキンのために作られたバーキンなどが爆発的人気で、価格も跳ね上がり資産保全に用いられるほどになってます。毛皮の高級ブランドのフェンディも人気で、当時ズッカのバッグが流行しました。
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