ゴシック建築には錬金術が隠されていると唱えた錬金術師・フルカネリ

錬金術とは、金属類を金や銀などの貴金属に変化させようとする術です。広義では、様々な物質や人間の肉体・魂までも作り上げようとすることを指します。古代エジプトや古代ギリシャが起源とされる錬金術は、紀元前のエジプトからイスラム世界に伝わり発展していきました。今回はそんな錬金術の本質や、錬金術の秘密がゴシック建築の中に隠されていると発表したき代の錬金術師・フルカネリについてご紹介します。
Contents
錬金術で人々が成し遂げようとしたこと
錬金術はその名の通り「金を錬成する術」として世に広まっていき、13世紀にはヨーロッパなどで大きく発展を遂げました。錬金術師だけでなく、多くの人々が錬金術に注目する時代が訪れます。当時の錬金術師は何を求めて錬金術にのめり込んでいったのでしょうか。
錬金術の本質は物質の変性にある
ルネサンス期(14~16世紀)になると、有名な錬金術師パラケルススが登場します。元々スイスで医者として働いていたパラケルススは、自分の医学知識をもって錬金術と病気の因果関係について自分なりの解釈をまとめました。そして物質を構成しているのは水銀・硫黄・塩の3種類であるとする「三原質」を発表し、病気もこの過不足が原因と考え多くの鉱物学的化学薬品を開発したのです。
数々の功績を残したパラケルススの理論を受け、錬金術を使用する際に必要とされた「賢者の石」と呼ばれる物質には、人々の病気を治したり不老不死にしたりする力があるとの認識が広まっていきます。錬金術には、人体を変性させる力があると考えられるようになっていきました。
人間を変性させる錬金術
賢者の石をもってすれば、人間を不老不死にできるとの考えが広まっていきます。そして錬金術を極めた人は、男性でもあり女性でもある両性具有になれると信じられていました。人間の肉体や魂を錬成することでより完全な存在へと近づけると考え、実現にむけて取り組んでいたと言われています。
途方もないおとぎ話のように感じられますが、当時の人々は究極の願いである不老不死をかなえるべく錬金術にのめり込んでいきました。そんな中、本当に錬金術をマスターしたのではないかと言われた錬金術師が登場します。
錬金術師・フルカネリ
20世紀に「伝説の錬金術師」と言われるフルカネリが登場します。フランスの電子工学者・ヘルブロンナーの弟子であり自身もまた原子力を研究していました。しかしフルカネリは本を出版する際のペンネームで、本名はもちろんそれ以外の素性も明らかになっていません。
書籍を発表
フルカネリは、ゴシック建築を代表する中世の大聖堂といった建物はオカルティズムの秘密に満ちているとの説を唱えた「大聖堂の秘密」を1926年に出版しました。この本でフルカネリは「ゴシック建築は寺院ではなく石の書物であり、その各ページには錬金術の秘密が隠されている。ゴシック建築の言葉自体が暗号である。」と述べます。錬金術の概念そのものが、ゴシック建築の中に隠されていると考えていたのです。
この本に多くの人が興味をひかれ、フルカネリに関心をむけました。その4年後には「賢者の住居」を出版し、書籍内で錬金術の原理について説きまたしても注目を浴びます。
謎に包まれたフルカネリの生涯
3冊目の書籍である「世の栄光の終わり」を執筆していたフルカネリですが、出版に至る前に消息不明になってしまいました。以降公の場には姿を現さず、どのような人生を送ったのかいつ亡くなったのかさえ不明のままです。
素性がほとんど分からないことから、フルカネリには数多くのオカルト的伝説が付いて回りました。
- 「大聖堂の秘密」「賢者の住居」はフルカネリではなく彼の弟子が書いた
- フルカネリは16世紀に生まれた人物で既に不老不死にたどり着いていた
などの説が唱えられましたが、未だに本当のことは不明です。最後の錬金術師と言われたフルカネリの存在は今でも語り継がれ、そのオカルト要素を抜き取って娯楽作品における「闇の世界の住人」として描かれています。
まとめ
今回は錬金術の歴史や著名な錬金術師の功績についてご紹介しました。金だけでなく人体も錬成できると考えられていた錬金術は長い歴史をもっており、その中でパラケルススやフルカネリなど様々な功績・伝説を残した錬金術師が生まれています。特にフルカネリの著書は非常に興味深い内容であり日本でも出版されているので、興味をもたれた方はぜひ錬金術に触れてみてください。