Contents
パイロープガーネットの
特徴と宝石言葉
- パイロープガーネットの特徴
パイロープガーネットは柘榴石の中でもしばしば産出される鉱物で、マンガンとアルミニウムを多く含有していることから、苦礬柘榴石(くばんざくろいし)の和名が付けられています。この石は地球の中心であるマントルが、かんらん岩や玄武岩が高い圧力にさらされることで変性して生じる鉱物で、30000気圧の高圧と摂氏900度の高温条件下が最適の発生環境であり、人工合成が極めて困難な宝石です。意外なことに純粋なパイロープガーネットは色が無く、この宝石を象徴する赤色は鉄礬柘榴石(てつばんざくろいし)に由来します。鉄礬柘榴石はアルマンディンガーネットの名前で知られる宝石で、柘榴石の中では非常に産出量の多い鉱物です。そもそも柘榴石は同じグループ内の鉱物同士が固溶体を形成しやすい性質を持ち、2つの種類が溶け合った形で存在することがほとんどの鉱物です。このような性質により、パイロープガーネットは自然環境中で赤色に着色され、時にアルマンディンと混合された性質を持つロードライトガーネットが誕生します。
- パイロープガーネットの宝石言葉
パイロープガーネットはアルマンディンと並ぶ一般的な赤色ガーネットであり、宝石言葉や石の持つ意味合いは広義のガーネットと同じです。そのガーネットの宝石言葉は「友愛」「真実」そして「勝利」であり、古代エジプトではお守りとして用いられてきました。現在でも勝負事や恋愛の成就に対するお守りとしてパワーストーンの観点からも人気の宝石です。
パイロープガーネットの
色と魅力
- パイロープガーネットの色
パイロープという名前はギリシャ語に由来し、炎のように燃えるという意味を持ちます。これはこの宝石をろうそくの炎にかざした時の色を表現したもので、ガーネットを代表する深い赤色の美しさが現れています。パイロープはアルマンディンとの鑑別が困難な鉱物で、その色味はしばしば似通ったものにも見えますが、最も美しいアルマンディンが葡萄酒のような深い色であるとするなら、パイロープは深紅のバラのような鮮やかさのある赤色が至高です。精密な偏光顕微鏡を用いて観察した場合、鉱物としてのパイロープは紫色に近い色を呈していますが、肉眼で観察する場合はアルマンディンとよく似た赤色の石に見えます。肉眼でもわかるほどはっきりと紫色が発現している個体はロードライトガーネットと呼称される、赤色ガーネットとは異なる魅力を持った宝石として珍重されます。
- パイロープガーネットの魅力
パイロープガーネットは18世紀から19世紀にかけてチェコ・ボヘミアで多く産出され、風化したかんらん岩に由来する土砂から発見されました。これはハプスブルグ・ロートリンゲン家が築き上げたハプスブルグ帝国に富をもたらし、王家の交流が深かったヴィクトリア朝時代のイギリスでも人気を博しました。こうした王侯貴族にも古くから愛されてきた赤色は、クラシックな落ち着きを感じさせ、年齢を問わず身に着ける事の出来るジュエリーといえます。産出量が多く、価格高騰しにくいことも魅力です。
パイロープガーネットの産出国
- 歴史的な産地はチェコ・ボヘミア
ガーネットは世界各地で古くから用いられてきた宝石で、古代エジプトでは護符の一種として使用され、紀元前3世紀頃の古代ギリシャでは現在のトルコ南西部に位置する小アジア地域で加工され、すでに宝飾品として利用されていたほどです。パイロープガーネットの最も有名な歴史は18世紀から19世紀のヨーロッパにあり、現在のチェコ西部と中部に加え、ポーランドの南部にかけて栄えたボヘミアで産出していました。ボヘミア産パイロープガーネットは近世のヨーロッパで人気を博しましたが、現在では資源が枯渇し、チェコガラスはこの時代に採集されたパイロープを再現するために発展したとも考えられています。
- 世界中で産出されるパイロープ
歴史的な産地であるチェコ・ボヘミアでの産出は無くなりましたが、パイロープはアルマンディンと並んで産出量の多いガーネットであり、その鉱床は世界各地に広がります。ヨーロッパではイタリアやノルウェーがその産地に当たり、アメリカや南アフリカなど各大陸に産地がある宝石です。日本国内でも愛媛県四国中央市で発見されていますが、商業的な採掘は行われていません。現在商業的に多くが産出されているのは南アフリカ・ケープ州とアメリカ・アリゾナ州であり、美しい赤色からアリゾナ・ルビーやケープ・ルビーといった俗称が定着しています。こうした背景から、パイロープは価格が安定した宝石であり、手に取りやすいジュエリーにも利用されています。
パイロープガーネットの
お手入れと保管方法
- パイロープガーネットのお手入れ方法
パイロープガーネットのアクセサリーを使用した後は、皮脂や汗による汚れやほこりが残らないように柔らかい布で乾拭きすることが必要です。宝石のお手入れをする場合は、一般的な眼鏡吹きのような布だけでなく、シカやヤギの革をなめして加工したセーム革を使うのもおすすめです。これは非常に柔らかい皮革で、カメラのレンズやオパールのように繊細な宝石の手入れにも用いられています。強い汚れが気になる場合は、ガーネットは水洗いのできる宝石なので、中性洗剤を溶かした水で洗うことも可能です。洗浄の際は柔らかいブラシを用い、宝石のくすみや地金の痛みの原因になるので洗剤は十分にすすぎます。急激な温度変化は宝石自体を痛める可能性があるので、ぬるま湯くらいの温度で行ってください。パイロープガーネットのモース硬度は7から7.5と、宝石の中では若干柔らかいものなので、超音波洗浄など強い洗浄方法を避けたクリーニングが必要です。
- パイロープガーネットの保管方法
サファイアやダイヤのように硬い宝石や金属とぶつかったり摩擦したりすると宝石が傷つく可能性があるため、保管の際は他のジュエリーと触れ合わないように保管します。内側が柔らかく十分な距離を保って収納できるジュエリーボックスや、購入時にセットされている専用のボックスがおすすめです。ペンダントは単体で保管する場合も、チェーンと石がぶつからないように注意し、極度の高温と多湿を避けて保管しましょう。
パイロープガーネットの
市場価値
- パイロープの価値は色味と透明度で決まる
パイロープガーネットは深みのある鮮やかな赤色が特徴の宝石で、黒色や褐色に近いものの評価は高くありません。宝石として重要な透明度(クラリティ)も重要な要素ですが、ガーネットは内包物(インクルージョン)が少ない宝石なので、石の中に衝撃や温度変化から生じたクラック(ひび割れ)がないことが重要です。宝石の中には採掘後に加熱加工することで人工的に美しさを引き出す物もありますが、ガーネットは加熱せずとも輝きがあり、加工の有無を心配する必要はあまりありません。
- アルマンディンガーネットと混同されやすい
パイロープはアルマンディンと固溶体を形成し、アルマンディンの影響で赤色を得ている鉱物であるため、アルマンディンとしばしば混同されることがあります。この2つは鉱物学的に異なるものですが、宝石としては市場価値がほぼ同一で、赤色ガーネットに分類されるため、鉱物のコレクションを目的としないのであれば、どちらでも似たようなジュエリーになるといえます。パイロープはアルマンディンに比べると大きな原石が採掘されない宝石ではありますが、アルマンディン同様に1カラット当たりの価格はカラット数が大きくなっても極端に上昇せず、大きさと価格の比例は安定しています。しかしながら、パイロープとアルマンディンの混合種で、青色の発生しないガーネットには珍しい、紫色をしたロードライトガーネットは珍しい宝石であるため市場価値は高くなります。
パイロープガーネットの
値段と価格相場
- パイロープは赤色ガーネットの相場が参考になる
アルマンディンとの鑑別が難しいパイロープは、赤色ガーネットでひとくくりにされていることもあります。そのため相場を知るには赤色ガーネット全体が参考となり、その場合はルース(裸石)状態で1カラット当たりの相場が安いものなら2,000円前後での販売もあり、クオリティの高いものでも10,000円前後から探すことが可能です。パイロープと明記されているルースであっても価格相場に大きな違いは無いので、赤色ガーネットの購入を検討しているのであれば種類にこだわらず色やクラリティを吟味する形でもいいです。しかしアルマンディンとパイロープの混合種である紫色のロードライトの場合は事情が異なり、1カラット当たりの価格は9,000円前後となります。
- ジュエリーの価格には幅がある
産出量が多い宝石であるパイロープガーネットを用いたジュエリーは多く流通しており、石の質やデザインなどによってその価格帯は幅広いものとなっています。手に取りやすい価格帯を探すのであれば、指輪は30,000円台から展開されており、ペンダントトップならそれよりもやや安価で石そのものの存在感があるデザインも見受けられます。よりクオリティの高いものやデザインの豪華なものとなれば、それに比例して価格が上昇するため、50,000円台から100,000円台まで価格の幅が広がります。パイロープに限定して購入するなら鑑定書付きのものや信頼できる専門店を選ぶのがおすすめです。
まとめ
パイロープガーネットは燃えるような深い赤色が特徴の宝石で、ハプスブルグ帝国のヨーロッパやビクトリア朝時代のイギリスでも人気を博した歴史ある宝石です。アルマンディンガーネットの影響で着色されているため混同されやすいですが、両者が混合された紫色のロードライトガーネットにも魅力があります。産出量が多く価格が安定している宝石なので多くのジュエリーに利用されており、普段使いのアクセサリーの一つに加えたい宝石といえます。
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