金の売却にかかる税金は?
シミュレーションしてみよう!
2023年9月には金の買取価格が1万円台を超えるなど、金の価格が上昇傾向にあることから、金の売却を検討している方も多いのではないでしょうか。
金の売却で注意したいのが、税金です。
金の売却益は、「譲渡所得」や「雑所得」、「事業所得」に区分され、一定額を超えると課税対象となります。課税対象額がいくらになるのかを把握するためにも、所得区分や計算方法について知っておく必要があります。
この記事では、金を売却する際の税金について、課税対象額の算出方法や売却で損失が出た場合に押さえておきたいことなどを解説します。
実際どれくらいの税金がかかるかのシミュレーションも紹介していますので、自身のケースに当てはめてみてください。
2024年12月12日 9:30更新
今日の金1gあたりの買取価格相場表
金のレート(1gあたり) | ||
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Contents
金を売却したときの税金は?
国税庁のホームページでも書かれているとおり、金を売却した際の所得は原則として譲渡所得に区分され、課税対象となります。
金地金を売ったときの所得は、原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。
引用:国税庁「No.3161 金地金の譲渡による所得」
※金を変形させてつくられた塊のこと。インゴットなどとも呼ばれる。
給与所得のあるサラリーマンが金を売却して利益が出た場合、得られた譲渡所得は、会社からの給与所得と合わせて課税対象となるため、一般的に確定申告が必要になります。
確定申告は1年間に生じた所得の金額と所得税を算出するための手続きです。申告が必要な場合は、期限内に申告や納税を終えられるよう、関係書類等を準備しておきましょう。
まずは金を売却したときの所得区分を知ろう
金の売却によって得られた所得は、原則として譲渡所得に区分されますが、場合によって雑所得や事業所得として取り扱われることもあります。
どのような基準で所得区分が変わるのか、所得区分の判断基準と概要を解説します。
金を売却したときの所得
①譲渡所得とは?
個人で持っていた金を売った所得は、継続的かつ営利目的でない限り「譲渡所得」に区分されます。
ただし、売却によって得られた金額がすべて課税対象となるわけではありません。
譲渡所得は金の所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種に分けられ、それぞれ課税対象となる金額の算出方法が異なります。
所有期間が5年以内の場合は、短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得となります。計算方法について詳しくは後述するシミュレーションで解説していますので詳しく知りたい方はご確認ください。
なお、譲渡所得金額を算出するには、売却時の金額や手数料などが記載された領収証や明細が必要となります。紛失することのないようしっかり保管しておきましょう。
②雑所得とは?
個人で継続的に金を売って収益を得ている場合、金の売却益は「雑所得」に区分されます。
雑所得にかかる税金の算出方法は、おもに「総合課税」と「分離課税」の2種類があります。
- 総合課税:対象となる各種の所得を合計してから税金を算出
- 分離課税:それぞれの所得に対して独自の計算式や税率を当てはめ、個別に税金を算出
ただし、原則として金の売却益は総合課税と認識していれば問題ありません。
分離課税となるのは、金投資口座や金貯蓄口座など金の現物を譲渡するわけではないケースです。この場合、性質としては金融取引と近いことから分離課税となります。
③事業所得とは?
事業として金を売却して発生した収益は「事業所得」に区分されます。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から得られた所得のことを指します。
実際に金の売却にかかる税金を
シミュレーションしてみよう
金の売却によってかかる税額を、以下の3つのパターンでシミュレーションしてみましょう。
-
-
×
-
-
=
-
シミュレーション1:所有期間が5年以内(短期)の場合
譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年以内の金を売却した場合、売却によって得られる所得は短期譲渡所得に区分されます。
課税対象となる短期譲渡所得は、金の譲渡益を算出後、以下の計算式で算出できます。
- 金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
- 課税短期譲渡所得金額=(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円
「譲渡費用」には、売却時の手数料や書類代などが含まれ、「その他の譲渡益」には、同年に発生した株式・土地などを譲渡した所得が含まれます。
仮に、金を500gまたは1kg売却した場合、短期譲渡所得にかかる譲渡所得金額は以下のように算出できます。(1gあたりの買取レートは9,908円、取得費・譲渡費用・その他の譲渡益はないものとして算出しています)
金を500g売却した場合
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
=500g×9,908円/g‐(0円+0円)
=4,954,000円
課税短期譲渡所得金額=(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円
=(4,954,000円+0円)‐50万円
=4,454,000円
金を1kg売却した場合
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
=1,000g×9,908円/g‐(0円+0円)
=9,908,000円
課税短期譲渡所得金額=(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円
=(9,908,000円+0円)‐50万円
=9,408,000円
シミュレーション2:所有期間が5年を超えている(長期)場合
譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超える金を売却した場合、売却で得られた所得は長期譲渡所得に区分されます。
課税対象となる長期譲渡所得は、金の譲渡益を算出後、以下の計算式で算出できます。
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
課税長期譲渡所得金額={(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円}×1/2
仮に、金を500gまたは1kg売却した場合、長期譲渡所得にかかる譲渡所得金額は以下のように算出できます。(1g当たりの買取レート9,908円、取得費・譲渡費用・その他の譲渡益はないものとして算出しています)
金を500g売却した場合
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
=500g×9,908円/g‐(0円+0円)
=4,954,000円
課税長期譲渡所得金額={(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円}×1/2
={(4,954,000円+0円)‐50万円}×1/2
=2,227,000円
金を1kg売却した場合
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
=1,000g×9,908円/g‐(0円+0円)
=9,908,000円
課税長期譲渡所得金額={(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円}×1/2
={(9,908,000円+0円)‐50万円}×1/2
=4,704,000円
シミュレーション3:短期・長期どちらもある場合
短期譲渡所得と長期譲渡所得が混在している場合、譲渡所得の特別控除は50万円が限度となり、短期譲渡所得から優先して控除されます。
短期譲渡所得に特別控除適用後、控除額が余っていた場合は、余っていた分だけ、長期譲渡所得も特別控除適用が可能です。
仮に、短期保有の金30gと長期保有の金100gを売却した場合、譲渡所得にかかる譲渡所得金額は以下のように算出できます。
(1g当たりの買取レート9,908円、取得費・譲渡費用・その他の譲渡益はないものとして算出しています)
短期保有した金にかかる税金
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
=30g×9,908円/g‐(0円+0円)
=297,240円
課税短期譲渡所得金額=(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除50万円
=(297,240円+0円)‐50万円
=0円(-202,760円)
長期保有した金にかかる税金
金の譲渡益=譲渡価額‐(取得費+譲渡費用)
=100g×9,908円/g‐(0円+0円)
=990,800円
課税長期譲渡所得金額={(金の譲渡益+その他の譲渡益)‐譲渡所得の特別控除残り202,760円}×1/2
={(990,800円+0円)‐202,760円}×1/2
=394,020円
金の売却で損失が出た場合の税金は?
金を売却する際、売却損になる可能性もあります。
売却損が出た場合、一定条件を満たしていれば、損失分を控除にまわすことが可能です。この仕組みを損益通算と呼びます。
損益通算の取り扱いは、所得区分によって異なります。「譲渡所得」「雑所得」「事業所得」それぞれにおいて損失が出た場合の取り扱いは以下のとおりです。
譲渡所得のケース
金の売却益が譲渡所得に区分される場合、発生した損失は、同年1月1日から12月31日までに発生した他の譲渡所得の利益と相殺できます。
対象はあくまで他の譲渡所得であり、譲渡所得以外の所得とは損益通算できない点に注意してください。
雑所得のケース
金の売却益が雑所得に区分される場合、発生した損失は、1月1日から12月31日までに発生した他の雑所得の利益と相殺できます。
事業所得のケース
金の売却益が事業所得に区分される場合、発生した損失は、給与所得など他の所得と損益通算できます。
損益通算してもなお損失が残ってしまう場合(純損失)は、青色申告することで翌年から3年間、繰越控除が可能です。
また、事業所得の場合、本年度の赤字分を翌年ではなく前年に繰り戻し、税金の還付を受ける繰り戻し還付もできます。
金を売却するうえで押さえておきたい税金のこと!
ここからは、実際に金を売却するときに気を付けるべき点を3つ紹介します。
①金の購入時に渡される計算書はなくさないようにしよう
金の購入時には、「計算書」を渡されます。計算書には、金の取得費用が書かれているため、なくしてしまうと売却額の95%が利益とみなされ、課税対象となってしまいます。
例えば、200万円で購入した金を300万円で売却した場合、売却益は100万円となります。
しかし、計算書を紛失してしまうと、購入額200万円を証明できません。そのため、売却額300万円の95%にあたる285万円が売却益とみなされてしまうのです。
計算書の有無によって、課税対象金額が大きく変わるため、計算書は必ず大切に保管しましょう。
②税理士に相談するのもよい
金の売却時は、税金はいくらかかるのか、売却益の所得区分についてなど、さまざまな疑問点が出てくるかもしれません。
さらに、売却によって確定申告が必要になる場合、手続きや書類の準備といった手間も発生します。
金の売却後、それにともなう手続きが不安な方は、税務署や税理士に相談して、詳しい手続き方法を相談すると安心です。
③金の売却は相場が高騰しているときがチャンス!
近年、世界的な経済不安や新型コロナウイルスの流行、ウクライナショックなどを背景に、金の価格高騰が続いています。
2023年9月に金の買取価格は史上初めて1万円台を記録し、今後も長期的に上昇傾向が続くと予測されています。
右肩上がりの金相場ですが、短期的には金が売られ相場が下落することも考えられます。
価格高騰している今こそ、金の売り時といえるでしょう。現在金をお持ちの方は、この機会に、金の売却を検討してみてはいかがでしょうか。
<関連記事>金を高く売るタイミングは?売り時を見分けるには「相場」を知ろう
金の売却にかかる税金Q&A
金の売却に関するよくある質問について回答します。
金の売却には確定申告が必ず必要?
金を売却した際、必ずしも確定申告が必要とは限りません。給与収入が2,000万円以下の給与所得者(サラリーマンなど)で、給与所得以外の所得の合計額が20万円以内であれば確定申告は不要です。
ただし、給与所得以外の所得が20万円以上や年末調整していない人は確定申告が必要になります。
また、事業が赤字で、確定申告によって税制優遇措置が受けられる人は、確定申告しておくのがおすすめです。
200万円以上の金の売却は税務署にバレるって本当?
金を200万円以上で売却した場合、店側は税務署に「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を提出しなければなりません。
そのため、売却価格が200万円以上になると、税務署に売却の内容が知られることになります。
所得を申告しなかった場合、重大なペナルティが課せられる可能性があります。
申告に必要な書類は大切に保管し、必ず期限内に申告しましょう。
金の売却時は、まず所得区分と相場価格を確認!
金を売却した所得は、「譲渡所得」「雑所得」「事業所得」の3区分に分類され、課税対象となります。
まずはどの所得区分に該当するかの確認が必要です。
金の売却益や売却損によって確定申告の必要がある場合は、損益通算が可能か、手続きに必要な書類が揃っているかなどをあらかじめ確認しておきましょう。
計算や手続きが難しい場合は、税理士や税務署に相談することをおすすめします。
近年、金は価格高騰が続いており、2024年は過去最高値を何度も更新しました。
今後も長期的に上昇傾向が続く可能性があります。現在金をお持ちの方や、売却するか悩まれている方は、価格高騰の今、売却を検討されてはいかがでしょうか。
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